職場仲間である辛坊治郎のパワハラ疑惑について言いたいこと【城下尊之】

職場仲間である辛坊治郎のパワハラ疑惑について言いたいこと【城下尊之】

城下尊之【芸能界仕事術】

 2週にわたって週刊誌でパワハラ疑惑を報じられた、ニュースキャスターの辛坊治郎(63)。彼が出演している番組の女性プロデューサーへのパワハラ疑惑だが、彼も報道に対しツイッターで反論している。

「社員プロデューサーに『いつでも飛ばせる!』と言ったと断定している。これはひどい。私はそんな事言わないのを信条に生きてきた!」「あの時私は、『貴女は局の責任者なんだから、私の発言がそんなに嫌ならクビにしたらいいだろ!』とは言った。文脈完全に逆」とツイートしている。

 辛坊治郎という男を僕は20年近く前から知っていて、一緒の番組で共演する仲間という時期も長かった。だから、彼のことはかなりよく知っているつもりだ。彼が個人に対して「いつでも飛ばせる」なんて言うとは、まったく考えられない。

 初めて彼と言葉をかわしたのは、局のメーク室で一緒になった時だ。彼が自分の出演する番組で「事件の被害者の名前を匿名にすべきか否か」というテーマで激論になったとき、彼は「実名報道でなければダメだ」と主張した。熱く語っており、僕も報道の仕事にかかわっていて同感だったので、そのことをメーク室で告げると、やはり熱く話をしてくれた。僕の質問にも、すごい勢いで答えてくれたものだ。

 もちろん、意見がぶつかるときもあった。いわゆる“公人”の定義で、僕はニュースキャスターやコメンテーターなど、多くの人に対して影響を与える側は「公人として扱うべき」と言った。そしたら彼は「芸人だってニュースや事件に意見を言うのだから、公人の意味が曖昧になってしまう。税金で食っている政治家、一部の上級官僚、大企業の経営者など、ハッキリした人に限定すべき」という意見だった。結局、歩み寄ることはなかったが、その後、一緒にトイレに行った。

 甚だビローな話で恐縮だが、いわゆる“連れション”という状態で、僕が「寄る年波には勝てない。最近は『出が悪いしキレも悪い』」と言うと、爆笑して「同じだよ。前立腺が弱りまくりだ」と笑い続けていた。

 僕が何を言いたいかというと、仕事や自分たちが主張しなければならないこと、やるべきことには熱い人で、言い争いがあってもおかしくない。「(辛坊氏は中国によるウイグル族弾圧を批判しており)それじゃダメだ。こうすべきだ。なぜなら……」とまくしたてることは、いつでもあり得ると思う。だからといって意見が合わないからといって「飛ばす」などと脅すわけがないと思う。真剣に考え、熱く語るけど、それを人と人との関係とは、まったく別とわかっていると思う。

 現在の番組で彼がキャスターを始めて、まだ1年も経っていない。彼の熱き勢いにビックリする人もいるかもしれない。だが、本当の彼を知れば、笑い飛ばせる話なのではなかろうか。

(城下尊之/芸能ジャーナリスト)