オープンワールドのマップでアーケードゲーム!? 『シェンムーIII』DLC第1弾「バトルラリー」が優れている理由

引用元:IGN JAPAN
オープンワールドのマップでアーケードゲーム!? 『シェンムーIII』DLC第1弾「バトルラリー」が優れている理由

オープンワールド(「シェンムー」の場合は厳密に言えばFREEというジャンルになる)のマップにはどんな用途が考えられるのか? ゲーム本編とは別に、面白い使い道はないものか?『シェンムーIII』DLCの第1弾「バトルラリー」が導き出した答えはずばり、「レース」と「宝探し」である。
レースと言っても、走りながらバトルするという一風変わった形式だ。『シェンムーIII』の白鹿村というエリアが5つのレースコースになっており、1つのレースを除けばどれも本編と同じマップで展開する。プレイフィールは一言で言えば「シェンムーがアーケードゲームになった」である。

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「シェンムー」の生みの親である鈴木裕のルーツを思えば、アーケードゲームのようなDLCはさほど不思議ではないのかもしれない。本編ではゲームセンターを訪れることができるし、ミニゲームも他のオープンワールドゲームと比べればアーケードライクなものが多い。改めて、ずっとアーケードゲームを開発してきたクリエイターがオープンワールドの元祖と呼ばれるゲームを作ったのは不思議と言えば不思議だが、オープンワールドゲームが数多くある現代において、それが「シェンムー」の個性に繋がっている。
しかし、ミニゲームにアーケードっぽさがある一方、ゲームの舞台やそこで生活する人々はむしろリアリティへのこだわりが「シェンムー」の最大の特徴で、アーケードらしさはない。そういう意味で、主人公の芭月涼を操作するバトルレースゲームが登場することは、いくら鈴木裕によるゲームであっても、多少の驚きが伴う。ちなみに、「バトルラリー」では涼に加え、『シェンムーII』から登場しているレン、さらに『シェンムーIII』で初登場となった韋珍の3キャラクターから選んでレースに挑める。「シェンムー」シリーズにおいて、涼以外のキャラクターを操作できるのは今回が初めてとなる――もちろん、アヒルを除けば。

私が驚いたのは、レンと韋珍にそれぞれ独自の操作感がしっかりとあることだ。使える技が違うのはもちろん、キャラクターを走らせているだけで違いを感じる。韋珍の動きは軽快だが、その代わり大きな敵に囲まれると身長やリーチの差を痛感する。レンは力技で突っ込むのは得意だが、その動きには正確さが欠けている。もちろん技数は少ないが、本格的な格闘ゲームを作るための土台が出来上がっているようにすら思えた。
しかし、「バトルラリー」は格闘要素こそあれど、その本質はどこまでもレースゲームである。プレイヤーはコースに沿って走っていき、道中に邪魔してくる敵をなるべく早く倒して進んでいかなければならない。敵を無視して一気にゴールまで突っ走ることもできるが、敵を倒さないとポイントが十分に貯まらない。いろいろなタイプの敵がいて、出してくる技も違えば頑丈さも違う。そこで、それぞれの敵をどのように素早く始末するかが攻略の鍵となる。HPの弱い敵であれば、大技を1発当てただけで処理できるかもしれない。しかし、同じ大技をもっと強い敵に当てた場合、倒れてもまだHPが残っているはずだ。この場合は、敵が起き上がるまで待つしかないので時間のロスになる。敵が倒れてしまうような技は、確実に無力化できなければ出したくないわけだ。HPの多い敵が2人でプレイヤーを待ち受けている場合はまた別だ。大技で1人目を倒して、起き上がってくるまでの間はもう1人を攻撃すれば良い。

このように、コースを何度も繰り返して走りながら様々な工夫をして、敵を少しでも早くダウンするコツを学び取っていく 。 それは、通常のレースゲームで急カーブでどのようにドリフトするかなどを考えるのと同様、少しでも時間を稼ぐための工夫であり、そういう意味で「バトルラリー」の本質はれっきとしたレースゲームと言える 。 難があるとすれば、キャラクターごとの性能差なのかもしれない 。 連続技の多いレンや韋珍と違って、敵が倒れてしまう単発技の多い涼を使いこなすのはかなり難しい 。 涼の使いにくさは少し残念だったし、ゲーム本編で覚えさせた技を引き継げないのも惜しい 。 「俺の涼はこんなもんじゃないはずだ!」と思ってしまうだろう 。 しかし、「バトルラリー」はバランスの細かくチューニングされた対戦ゲームではなく、あくまで1人プレイ専用のゲームである 。 そういう意味で、レンや韋珍で記録を更新できた後に、より難易度の高い涼で挑戦するという楽しみも待っているわけだ 。