人生に2度死んだ男<1>「なんだ円楽じゃないんだ」の声…【ダンカンの笑撃回顧録】

人生に2度死んだ男<1>「なんだ円楽じゃないんだ」の声…【ダンカンの笑撃回顧録】

【ダンカンの笑撃回顧録】#24

 クルクルクル、カターン! ピーポーピーポーピーポー。夜の住宅街に鳴り響く救急車のサイレン、そして救急隊員のタンカに乗せられ運ばれる男は「ウウウ……し、し、死ぬ~」、それを取り囲む人々の手には画像を撮ろうと握られたスマホや携帯電話が……さらにその群衆たちは「えっ、円楽さんじゃないんだ?」と口々に不思議な声をあげるのであった……。

「し、し、死ぬ~」と意識を失いそうになっているのはまさしく俺だ~!! ということで、今回は2010年の中野区のわが自宅前に俺の人生ルーレットは止まったようである。

 例えば、あなた、「いや~、死ぬかと思った」という言葉を口にした記憶はありませんか? たいがいの人が人生において数回は発していると思うのです。では、さらにお尋ねしますが、もしその時の状況が悪い方に出ていたら、「本当に死んでました?」。そーなると死んでたと答える人は極端に少なくなるのではないでしょうか?

 しかし、俺はこのリアル「死ぬかと思った」を人生で2度も経験しているのです。

 まず、冒頭の救急車で運ばれる経緯を説明すると、自宅で一人シャワーを浴びている時に足を滑らせて肋骨付近を強打!! あまりの激痛に浴室の床にうずくまること2、3分、そのうち次第に痛みが弱くなってきたので衣服を身に着けた……と思った次の瞬間、浴室での痛みをはるかに超える痛みが……いえ、痛みを飛び越え、意識がなくなっていくような……。

 実はこの時、俺の体に何が起きていたのか? これは後日、担当医より説明されたのですが、浴室で転倒した時に肋骨が折れ、肺に突き刺さったらしいのです。しかし、あまりに見事に刺さったために肺の空気は漏れなかったらしいのですが、その後の着替えにより肋骨が肺から抜け、一気に肺がしぼんでいったということです。

 ちなみに、急激に肺が縮むと心臓を押さえつけて死に至るケースも少なくないと聞かされ、ゾッとしたのでした。正直、薄れゆく意識の中で119番した記憶さえないのですが、救急車に乗せられる寸前の群衆と、「円楽師匠じゃないんだ?」、揚げ句には「なんだ、ダンカンかよー!!」の声は不思議に耳に残っていました。

 では、なぜ、円楽師匠じゃないんだ? の声が飛び交ったかというと、なんと先代の三遊亭円楽師匠と俺の家は道をはさんで20歩の距離だったのです。だから、師匠がお元気な時は俺と子供で「ピンポ~ン! チャラ~ン、越後生まれのこん平で~す!!」とピンポンダッシュをしたものです。懐かしいなあ~(って、大の大人がそーいうことするんじゃねーよ!!)。

 それが「死ぬかと思った」の2回目で、1度目は35歳の頃、急性膵炎(すいえん)で1カ月以上の入院、なんと3週間は点滴のみ……。こちらは肋骨より重症な死ぬかも……だったのです。それは次回に。=つづく

(ダンカン/お笑いタレント・俳優・放送作家・脚本家)