チーフPが語る、M-1スタッフの強すぎる芸人愛。「ちょっとおかしい

引用元:テレ朝POST
チーフPが語る、M-1スタッフの強すぎる芸人愛。「ちょっとおかしい

結成13年目のコンビ・ミルクボーイが優勝を果たした「M-1グランプリ2019」。

一夜にして人生が激変した彼らは、M-1直前、そして優勝直後、どのように過ごしていたのか。

そのすべてを追ったドキュメンタリー『M-1アナザーストーリー ~“史上最高”大会の舞台ウラ完全密着~』(1月11日ABCテレビで放送)が、「感動した」「泣ける」と大きな話題になっている。

近年は毎年、M-1グランプリの開催からおよそ2週間後に放送されているこの『アナザーストーリー』。

決勝当日の控室やステージの裏側、そして予選の様子はもちろん、M-1出場芸人たちの普段の姿にも密着し、自宅での一幕やアルバイト風景まで映すこの番組。まるでアスリートのように、「日本一の漫才師になりたい」と日々魂を削る芸人たちの生き様には心打たれずにいられない。

今回放送された“M-1グランプリ2019版”の同番組も、例に漏れない内容だった。

優勝したミルクボーイ。それまで無名であった2人が人生を変えようとこじ開けた“M-1決勝”という扉の先に見えたのは、彼らの優勝を自分のことのように喜ぶ周囲の人の姿だ。

彼らがたたき出した681点というM-1史上最高得点が発表されているとき、ボケの駒場孝の“オカン”はテレビを観ながら飛び跳ねて喜んでいた。

「出世払いや!」と言って2年間にわたり無料でトレードマークの“角刈り”を整えてくれたツッコミの内海崇の理髪師は、優勝後に店を訪れた内海の髪を切りながら、嬉しそうに密着スタッフにミルクボーイのネタのスゴさを語った。

これら周囲の人たちの反応に、静かに、かみしめるように涙するミルクボーイの2人の姿は、視聴者の涙腺も強く刺激したことだろう。

M-1スタッフは「芸人のことが好き過ぎて、ちょっとおかしい」

この『アナザーストーリー』を観て驚くのは、その膨大な映像の量だ。

今大会の関連映像だけでもカメラ123台で累計242時間撮影されているというが、番組には、2006年にミルクボーイが大学生コンビとしてM-1に初出場した際のコメント映像までもが登場してくる。

M-1スタッフは、一体どれだけ出場芸人たちに密着しているのか?

これについて、2003年からM-1グランプリのディレクターになり、2007年からは6大会連続で総合演出を務め、現在はチーフプロデューサーとして同大会に携わっているABC朝日放送テレビ・田中和也プロデューサーに聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「M-1のスタッフはみんな、芸人のことが好き過ぎて、ちょっとおかしいんですよ(笑)。僕もまぁ、そうですね。ほんとみんな、アホになってしまうんです…」

好き過ぎて、アホになる――。その姿勢が表れるのは、“撮る”という行動だけではないという。

「僕自身も、(『アナザーストーリー』の映像などを観ていて)よく撮ってたなって思うシーンがあるし、なにより“よく探してきたな!”って思う映像がたくさんあります。15年分、テープは1万本くらいあるはずですからね。(制作スタッフの努力は)すごいと思います」

現在では決勝に出場できるようになった芸人でも、1回戦や2回戦より先に進めず喘いでいた時代もある。そんな“ピントが合っていない”時期に、画面の隅のほうに一瞬映った若き日の決勝芸人たち。それを探すのというのはまさに、森の中に隠された木を探すような作業だろう。