なぜ?人気ハリウッド映画の日本ロケに政府が助成金 あの名作も…誘致で負け続きの日本が反撃へ

なぜ?人気ハリウッド映画の日本ロケに政府が助成金 あの名作も…誘致で負け続きの日本が反撃へ

このたび、ハリウッドの人気アクション映画「G.I.ジョー」シリーズの最新作、「G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ」が日本で撮影されることが決まり、10日、首相官邸の近くにある東京・日枝神社で製作発表会が行われた。

【画像】ハリウッドの人気アクション映画「G.I.ジョー」

この映画は世界を守る最強の戦闘エキスパートチーム「G.I.ジョー」と、世界征服をもくろむ悪の組織「コブラ」との戦いを描くヒットシリーズで、最新作ではこれまで漆黒のマスクで正体を隠していた「スネークアイズ」が主人公となり、彼の誕生の秘密が明かされる。

ロベルト・シュヴェンケ監督は、これから兵庫(姫路)や大阪、茨城などでロケ撮影が始まることを明かした。関係者によると「ハリウッド映画史上最大規模となる日本各地でのロケ」ということだが、この作品は日本政府にとっても、大きな意味を持つ。内閣府は初めて、外国映画を日本国内で撮影してもらうための調査に乗り出していて、この作品は初の支援対象となっているのだ。ではなぜ政府が、外国映画のロケを支援するのか。

なぜ政府がロケに助成金?

実は政府は、海外映画のロケを、地方を潤し、日本の魅力を海外に発信する“切り札”と位置付けている。すなわち、外国映画のロケを誘致することで、地域経済や国内産業の活性化が見込まれ、さらに日本の魅力を世界に対し発信する「クールジャパン戦略」への大きな効果もあるとみている。

海外映画のロケ誘致メリット1、経済効果

ロケを行うと、当然ながらキャスト・スタッフの滞在費や飲食費、さらにはセット建て込み費用などで、ロケ地にお金が落ちる。ハリウッド級の映画であれば、その効果はひとしおだ。

さらに、撮影時に集客が見込まれるだけでなく、撮影後も「聖地巡礼」のような形で、映画を観たファンがロケ地を巡ることが期待できる。近年も、アニメや映画の舞台となった場所を巡るツアーを組む旅行会社の例がある。このように、外国映画のロケを行うと、ロケ地へのインバウンドの増加など、経済効果が期待できるのだ。

海外映画のロケ誘致メリット2、日本の魅力発信

そして日本を題材にした映画の場合、映像を通してロケ地を含めた日本の文化・魅力の発信につながる。日本のイメージを向上させるという「ブランディング」の効果に加えて、地元産品・製品の認知度を上げることもあるだろう。ロケ誘致が地方を潤す好事例として、佐賀県のケースが挙げられる。

佐賀県では2014~15年にかけて、地元の伝統行事や風景を盛り込んだ映画やドラマの誘致を行った。すると、映画を観たタイ人が、ロケ地を巡りに続々と佐賀を訪れるようになったのだ。ロケ地の一つである祐徳稲荷神社は、タイのメディアに紹介されたり、ロケ地巡りツアーに組み込まれたりされたことで、多い日に200人ものタイ人観光客が訪れたという。

こうしたインバウンド増加により、佐賀の地元住民らが自主的にタイ人観光客に対し映画にまつわる特産物を配るようになったほか、東京オリンピック・パラリンピックではタイのホストタウンに佐賀が選ばれるなど、ロケ誘致が文化やスポーツにまで波及効果を生んでいる。