長谷川博己、明智光秀は「今の時代に必要な新ヒーローかも」 同時代性を強調

長谷川博己、明智光秀は「今の時代に必要な新ヒーローかも」 同時代性を強調

2020年NHK大河ドラマ『麒麟がくる』(1月19日スタート、毎週日曜20:00~)で主人公・明智光秀を演じる俳優の長谷川博己(42)。斎藤道三を主君として戦場をかけぬけ、その教えを胸にやがて織田信長と共に、多くの群雄と天下をめぐって争う智将・明智光秀の謎めいた前半生にも光を当てた本作で、光秀役をどのように演じているのか。昨年6月のクランクインから約半年、光秀と向き合ってきた感想や手応えなど、本人に聞いた。

【写真】長谷川博己ら『麒麟がくる』役衣装を披露(19年6月撮影)

■「新しい令和の戦国大河ドラマ」を目指す

――改めて明智光秀を演じる心境をお聞かせください。

謀反人として信長を殺したという悪いイメージもあったり、そうではないのではないかという説もあったり、いろいろな説がある人物なので、それをどのように演じるのか最初すごく楽しみで、明智光秀という面白い題材を主役にしたということに興奮しました。見る人によって、「こういう明智像じゃない」とか、「求めていた明智像はこれだ!」とか、いろいろ賛否もあると思うので怖さもありながら、いずれにせよ何かが起きるのではないかという楽しみを感じながらやりたいと思いました。

――約半年撮影してきて、手応えはいかがですか?

みなさんが期待しているような戦国時代の大河ドラマができているのではないでしょうか。昔のような王道でありながら、新しさもあって、同時代性を感じるような作品になっているのではないかなとも思います。なぜ今、明智光秀というドラマが必要だったのかというのも感じていただける作品になっていったらうれしく思います。

――これまで小説やドラマでどのように戦国時代や明智光秀と向き合ってきましたか?

『国盗り物語』を見たり、元々好きだった『黄金の日日』を見直したりしました。当時の作品は舞台の演劇を見ているかのような重厚さがあり、そのムードで演じることに惹かれながらも、今の人たちに楽しんでもらうにはどういうものがいいのか。新しい令和の戦国大河ドラマを作っていけたらと思っています。

■「今の世の中にいたらいいな」と感じる明智光秀の魅力

――どのように明智光秀像にアプローチしましたか?

いろんな資料や本を読みましたが、いろんな人がいろんなことを仰っていて、調べれば調べるほどわからなくなる。撮影に入ってからも読んだりしますが、基本的に現場には持ち込まず、池端(俊策)先生の脚本の中での光秀をやっていこうと。最初はどうしても、光秀はこういう人間だろうと考えてしまっていましたが、それを忘れて無の状態で臨んだほうがしっくりといけるなと。だから今は、『麒麟がくる』という作品の中での新しい明智光秀像を作りたいという気持ちで臨んでいます。

――「同時代性」、「令和の大河」とおっしゃいましたが、明智光秀について今の時代の人たちが感情移入できる部分や、長谷川さんが感情移入できる部分はありましたか?

明智光秀は漠然としか言えませんが、今の時代に必要な新しいヒーローなのかもしれません。ヒーローと言うと違和感を抱く人もいると思いますが、そういう部分もあるのではないかなと。上司に対してズバッと言う時は言うし、知性と品性で突き進むというのは、「今の世の中にこういう人がいたらいいな」と思うような人物なのではないかという気はしています。いろんなことを強いられてかわいそうだなと、感情移入もします。それは光秀が教養人としてできる人間だからだと思いますが、命令を受けて敵国を探りに行くなど、様々な経験をしたからこそ、明智光秀は“智将”と語りつがれる人間になったのかなとも感じています。

■生活も当時の武将らしく!?「早起きになりました」

――今までも大河ドラマに出演されてきましたが、主演という立ち位置はいかがでしょうか?

座長というポジションになるわけですから、全体を見通していないといけないなと感じます。僕は基本的には役に入り込みたいタイプなので、座長というのはなかなか責任が重いポジションだなと。主役は周りの人たちからいろいろなものを受けて、それをなだらかに次に渡していかないといけないというのを改めて感じています。

――やっぱり大河は違うなと感じるところは?

1つのキャラクターを1年を通して演じるというのは、やはりすごいことですよね。この経験ができるのは大河ドラマだけなので、その主役をやらせていただいているというのは、こんな役者冥利に尽きることはないなと思っています。体が追いつかずもう嫌だなってなることも正直ありますが、次の日にロケですごく景色のいい場所につくられたオープンセットで演じていると、素晴らしい経験をさせていただいているなと、時折幸せを感じています。

――撮影が始まってから生活習慣が変わったということはありますか?

もともと朝は苦手だったのですが、とても早起きになりました。戦国時代の武士を演じていると常に興奮状態になるからか、40歳を超えたからなのかわからないですけど(笑)。ロケで朝日を狙うこともあって、2時半起きとかが続いて早起きの習慣がついたというか、もしかすると、その当時の人間らしくなってきているのかな(笑)

■長谷川博己

1977年3月7日生まれ、東京都出身。2001年、文学座付属演劇研究所に入所。2002年に『BENT』で舞台初出演。2008年に『四つの嘘』でテレビドラマ初出演。2010年にNHKドラマ『セカンドバージン』で注目を集め、2011年にテレビ東京『鈴木先生』で民放テレビドラマ初主演。主な出演作は、日本テレビ『家政婦のミタ』(2011)、NHK大河ドラマ『八重の桜』(2013)、TBS『小さな巨人』(2017)、2018年度後期NHK連続テレビ小説『まんぷく』、映画『進撃の巨人』(2015)、『二重生活』(2016)、『シン・ゴジラ』(2016)など。

(C)NHK 酒井青子