小谷実可子と藤本隆宏が語る五輪コンサートの魅力「感動を体感してほしい」:インタビュー

引用元:MusicVoice
小谷実可子と藤本隆宏が語る五輪コンサートの魅力「感動を体感してほしい」:インタビュー

 オリンピック映像とフルオーケストラ演奏を融合させる『オリンピックコンサート2020 プレミアムサウンドシリーズ』が1月11日の東京芸術劇場・コンサートホールを皮切りに全国6都市7公演が開催される。競泳元五輪代表で2012年からナビゲーターを務める俳優の藤本隆宏氏と、アーティスティックスイミング五輪銅メダリストの小谷実可子氏が取材に応じた。

 JOC(日本オリンピック委員会)が、オリンピリズムに掲げられたスポーツと文化の融合を形にすることを目的として1997年から開催。オリンピックの感動シーンをまとめた映像をバックに、オーケストラが「オリンピック東京大会ファンファーレ」など名曲を奏でる。また、各公演にオリンピアンが参加、秘話が語られる。

 9年連続ナビゲーターを務める藤本氏は「映像は、アスリートが勝った瞬間だけでなく、立ち向かっていく過程も含まれている。それに高揚されて涙が流れる。しかもアスリートが必ずその場にいる。その空間に感動する」とし、映像や会場の空気感を踏まえた指揮のもとで演奏される音楽に醍醐味があるとして「機械的音楽では出せないリアルな音楽で高揚感は更に高まる」と語った。

 プライベートでも観覧したことがある小谷氏は「スポーツや音楽で感動に触れた時に心が清らかになり、自分も頑張ろう、自分も役に立ちたい、一緒に応援したいという気持ちが高まってくる。その心の動きが行動に結びついていく。そのきっかけ作りになるのがこのコンサート。言葉ではなく心にストレートに届く素敵なもの」と、オリンピックムーブメントが成し得ようとしている意義がコンサートで体現されると述べた。

 また、映像で印象に残っているシーンとして藤本氏は、バンクーバー五輪で銀メダルに終わった浅田真央氏を挙げた。「金メダルが取れなくて涙を堪えているシーンは耐えられない」。更に、小谷氏がソウル五輪で銅メダルを取って選手生活を終えたのではなく、その後にバルセロナ五輪で復帰するも補欠で終わったことを映像で知ったとして「栄光の後に挫折があったことを微塵も感じてなくて、そういうことを知る機会になる」とした。

 一方の小谷氏は当時を懐かしそうに「実は絶望で選手生活を終えた」と笑みを見せつつ、「映像で当時の姿を見ると苦しかった時にトリップする。音楽にもその時代の流行があって当時の音楽を聴くと思い出される。映像もそうでオリンピックの名場面を見ながら『あの時はああだったな』と再び体験することが出来る」と記憶を呼び起こす役割が音楽と映像にはあると説明。更にコンサートでも流れるオリンピック賛歌を聴くと「身も心も引き締まる」と語った。

 また、競技者から俳優に転身した藤本氏はスポーツと音楽の共通点は「感動を与えること」を挙げ、「メダルを取れなかったときに何のためにスポーツをやっているのかを悩み、その時に人が喜んでくれるからだと気づいた。ミュージカルではアンサンブルやコーラスに感動するのはもちろん。それに感動しているお客さんに感動して素晴らしいと思えた。我々競技者とやっていることが重なった」とし、「スポーツ界から演劇の世界になぜ行ったのか? と聞かれることがあるが自分としては同じ道を歩んでいる」と第二の人生に俳優を選んだ理由を明かした。

 また小谷氏は、音楽と密接な関係があるアーティスティックスイミングについて「水中での演技と曲、そして水着、いろいろな力を借りている。競技の勝負ではあるがアートという観点もある」とし、海外で行われているアーティスティックスイミングとオーケストラのコラボレーションの日本開催に期待感を示した。

 改めて藤本氏は「オリンピックやスポーツに興味を持っていただく良い機会。勝者でも敗者でもアスリートが頑張っている姿が映像を通して見ることができる。まさに筋書きのないドラマ。体験したことのない大きな感動を持って帰れると思います。ぜひ足を運んでほしい」。小谷氏は「オリンピックの感動を体感してほしい。またオリンピアンがゲストで登場する。時間と場所を共有することで迫るオリンピック、パラリンピックに向けて前進するきっかけになればいい。ぜひ同じ空気を吸いに来てほしい」と呼びかけた。【木村武雄】