懐かし『クラッシュ・バンディクー3』 魅力は「ゲームオーバー」の楽しさ

引用元:マグミクス
懐かし『クラッシュ・バンディクー3』 魅力は「ゲームオーバー」の楽しさ

 1998年12月に誕生したプレイステーション用ソフト『クラッシュ・バンディクー3~ブッとび!世界一周~』(以下『クラッシュ・バンディクー3』)。本作は「宇宙初の奥スクロールアクション」というキャッチフレーズを掲げて登場した『クラッシュ・バンディクー』シリーズの3作目にあたります。第1作目と第2作目から受け継いできた歯ごたえ抜群の難易度はそのままに、最短ステージクリアを目指すタイムアタックモードや新規アクションの追加など、順当にゲームシステムをアップグレードさせた良作でした。

【画像】やられ方に爆笑した『クラッシュ・バンディクー3』の思い出

 そうした数々の要素は、『クラッシュ・バンディクー3』を支える大きな魅力に違いありません。しかし本作を語る上ではまだまだ不十分です。なかでも忘れてはいけないポイントが一点。それは、作品を重ねるごとに深みが増した”バリエーション豊富な死亡シーン”にあります。

 そもそも何らかの目的のためにプレイするビデオゲームにおいては、キャラクターの死亡は明確なデメリットがつきまといます。ミスをするたびにステージの最初やセーブ地点まで戻される。プレイヤー残機が減少する。手に入れたお金や各種アイテムを失ってしまう……。ゲームオーバーが絶対的なメリットにつながるゲームシステムでもない限り、基本的にキャラクター死亡やプレイミスは避けたいシチュエーションです。少なくとも筆者は故意にミスを引き起こしたり、ましてやキャラクターを死なせたりする行為は良しとしていませんでした。

 ところが『クラッシュ・バンディクー3』をプレイしたことにより、筆者の常識が一変。いつしか自分から積極的に死亡シーンを求め出したのです。

同じ敵に殴られ続けて気付いた最大の魅力

『クラッシュ・バンディクー3』には敵やギミックごとに死亡シーンが用意されており、どれもコミカルさを全面に押し出した作りとなっています。もちろん死亡(ミス)には変わりないので、ゲーム攻略の面から見ると完全な機会損失です。しかし死亡シーンのクオリティが高く、またひとつやふたつどころではないため、自然と「次はどんなやられ方なのかな?」と意識が変化。最終的にチェックポイントまで戻されると知りながらも、気付けばステージ道中で主人公のクラッシュ君をゲームオーバーに叩き落とす楽しみに目覚めていました。

 特に印象深いのは、中世ステージ「きょじんさぎょういんでんせつ」で勢いよく殴られる死亡シーン。この敵はクラッシュ君の倍以上の体格を誇る大男。登場時はその場から動かないものの、両手に持ったこん棒を振り回す危険なキャラクターです。とはいえこん棒を振るタイミングは一定間隔。パターンを覚えれば苦労することなく突破できます。

 にもかかわらず、脳内には「あのこん棒で殴られたらどんな風にやられるんだろう」という疑問が浮かび上がります。殴られるゲーム内のキャラクターからすれば迷惑でしょうが、湧き上がる好奇心の前に止まることはできません。その瞬間、考えるよりも先にコントローラーのスティックを前方に倒していました。

 結果は大満足。こん棒で顔面を殴られたクラッシュ君はなんと手前に吹っ飛び、画面いっぱいに顔をベターッと押し付けて倒れました。時間はわずか数秒。されどインパクトは絶大。脳内には「こん棒に殴られる侵入角度で吹っ飛び方が変わるんじゃないか?」といった新たな疑問も発生し、結局そのステージをクリアするまでに試行錯誤を兼ねて30回近く殴られ、本作が秘める死亡シーンの魅力に気づくことができました。

 真っ当なゲーム作品の主人公が倒れる光景を見てゲラゲラ笑っていたあの頃の筆者は、もしかすると相当な悪人だったのかもしれません。ですが実際に本作を遊んだことがあるユーザーなら、誰もが経験した良き思い出だったのではないでしょうか。

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