こたつに入ったままどこにでも… 能田達規のSFギャグ「おまかせ!ピース電器店」で発見 マンガ探偵局がゆく

引用元:夕刊フジ

 【マンガ探偵局がゆく】ミッション(109)街を自走するこたつを探せ

 晩秋、というよりも初冬の寒さだ。冬が来ると恋しくなるのがこたつ。今回はこたつに関する調査依頼である。

 「こたつが大好きです。一度こたつに入ってしまうともう出る気になりません。とはいえ、トイレや食事の時は出ないといけない。これが辛いです。子供の頃読んだマンガの中に、入ったままでどこにでも連れて行ってくれる便利なこたつが登場した記憶があります。あれは、なんというマンガだったんでしょう」(こたつねこ・32歳独身)

 一度入ったこたつから出られないという気持ちは痛いほどよくわかる。

 調査の結果、依頼人が探しているマンガは、能田達規が1996年から2001年まで『週刊少年チャンピオン』で連載した「おまかせ! ピース電器店」の第12話「幸せいっぱい?こたみか号!」の巻だということがわかった。単行本では第2巻に収録されている。

 ピース電器店は天才科学者・ピース貫太郎がオープンしたオリジナル家電専門の電器屋さん。メーカー製とは一味違った便利家電がウリだ。主人公はピース家の長男・健太郎。中学生ながら父親譲りの発明の才能を秘めている。しかし、電器屋としてはまだまだ未熟。アイデア先行のおかしな新製品を開発しては騒ぎを起こしている。

 設定は近未来だが、舞台になる東京・杉並の商店街などはどこか懐かしく、1話完結のストーリーも古き良きギャグマンガの名残りがある。ちなみに、ピース貫太郎の名前は74年にヒットしたホームドラマ「寺内貫太郎一家」からの拝借だ。

 発明品も、蕎麦屋の出前の代わりに自らお客さんの家まで行ってくれるどんぶりだの、電磁推進釣りロボット「まんぼーくん」など楽しげなものばかり。

 「幸せいっぱい?こたみか号!」では、冬が来て、どうしてもこたつから離れたくなくなった健太郎が、自走式のこたつを発明するところから事件が起きる。

 コタツに入ったまま街に出て、店の配達もスイスイ。配達が終わった健太郎は幼馴染の立花桃子らクラスメートを誘って、こたつで鍋を楽しみながら遊園地に遊びに行こうと企てる。

 自走式こたつのスピードアップのため、一計を案じて路線バスの後ろに自走式こたつを繋いだところ暴走して…。

 単行本は全21巻。古本でそろえるのは比較的容易。電子版は「マンガ図書館Z」で無料公開されている。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。