たけしの「お笑いウルトラクイズ」のトンデモ舞台裏<2>

たけしの「お笑いウルトラクイズ」のトンデモ舞台裏<2>

【ダンカンの笑撃回顧録】#22

「お笑いウルトラクイズ!!」で「滑り台バンジージャンプクイズ」に挑んだ俺であったが、それは、現在のテレビでは決してやれない、大げさではなく、命懸けのところがあったのだ。

 例えば、60メートル超えの屋上からバンジージャンプをするクイズに関してはもちろん、本番前に入念にスタントの方々がリハーサルを何度となく重ねてはくれているものの、事前の説明では「大丈夫です! 多分……」「えっ!? 多分、て?」「いや、我々もプロとしてやれるところまではやりましたが、突風が吹いた場合とか落下中に足に絡んでいるゴムが滑り台の……いや、やめときましょう……」「やめないでー!! なんで後半、言葉を濁しちゃうわけ?」という具合に、自然現象や突発的なモノまではリハーサルできないというのが実情だった。

 当然、人間であるからいくら命懸けといっても命を失うのだけは勘弁なのだが、一般の人には信じてもらえないかもしれないが、我々お笑い芸人という生き物は「命はダメだけど、笑いが取れるなら……う~ん、腕の一本折れるくらいまでなら、ま、いいか~」という、もうどうしようもない性があるのです。

 折れるといえば、「お笑いウルトラクイズ」のロケを熱海の海岸でやった時に、わがたけし軍団のグレート義太夫くんが落とし穴で片足を複雑骨折したことがあった。折れた方の足は不自然に外側に曲がっていた。

■複雑骨折しても「ウケました?」

 さ、それを見ていた伊藤輝夫プロデューサー(テリー伊藤)、どんな行動に出たと思います? 大道具さんから素早くナグリ(カナヅチ)を借りると「ダンカンちゃん、クイズね!」と俺にマイクとナグリを手渡すのでした。こーなると、バラエティー人間の「阿吽の呼吸」で、細かい指示など一切なく、「骨折クイズ~!! さ、義太夫くんが骨折してしまいました。折れたのはどっちの足(曲がっているから分かるって!!)、では、ヒントで~す!」と折れた足の方をナグリでコツン!「ギャー!!」と海に響き渡る断末魔の叫びのような声……。それでも、その後、義太夫くんは、「どうでした? ウケました?」と骨折より笑いを気にしてるんだから、もう我々は完全に職業病に侵されているのです。

 伊藤さんの突然のフリとなると……。「元気が出るテレビ」の荒川の河原で、当時流行していたSONYのCM、サルがウォークマンを聴くというのをやった時のこと。林家ぺーさんの全身に毛をはりつけて撮影することになり、よりリアルにとペーさんの全身に毛を特殊メークしていたら、ペーさんの顔から血の気がドンドンうせていったのです……。そうです、肌を毛で覆ったことにより皮膚呼吸ができなくなり、ついには失神寸前となってしまったのでした。すぐに救急車を呼んだのですが、救急隊員がタンカで救急車に運んだまさにその時、伊藤さんから俺の手にマイクが渡されたのです。すかさず救急車の中に横たわるペーさんの隣に動いた俺は「ペーさん、最後にタンカでダジャレを!!」とマイクを向けたのです。

 消えゆく意識の中でペーさんは白目をむきながら「タ、タ、タンカ(丹波)哲郎…ガクン」と見事なひと言を残し、救急車のピーポー、ピーポーという音とともに遠ざかっていったのでした……。 (つづく)

(ダンカン/お笑いタレント・俳優・放送作家・脚本家)