寅さん、スター・ウォーズ…令和最初のお正月は何を見る?

引用元:夕刊フジ

 2019年の映画界は「天気の子」が観客動員1000万人を突破、興行収入も過去最高を更新する勢いだ。令和最初のお正月は何を見るか。邦画は正月の定番だった「寅さん」が22年ぶりに復活し、洋画も充実。邦画を映画評論家の垣井道弘氏、洋画をおかむら良氏が厳選して紹介する。

 ■邦画

 □映画評論家・垣井道弘氏

 昭和生まれのオレンジ世代は渥美清さんが演じた寅さんの失恋に笑って泣いて、元気をもらいながら歩んできた。イチ押し「男はつらいよ50 お帰り寅さん」(山田洋次監督)はシリーズ誕生50周年を迎えた第50作。小説家に転身した満男役の吉岡秀隆と、かつて結婚の約束をしたイズミの後藤久美子が再会するストーリーで、回想シーンに何度も登場する元気な寅さんと歴代マドンナたちがやたら懐かしい。

 日本映画の創生期に活躍した活動弁士にスポットを当てた「カツベン!」(周防正行監督)は若手実力派の成田凌と黒島結菜ら豪華キャストの群像劇。劇中で上映する無声映画を新たに撮り直した労作で、俳優よりも人気があった活動弁士たちの個性的な名調子が面白い。新旧映画館の対立をめぐって、恋あり笑いありスリルありのドタバタ喜劇を楽しめる。

 国内主要ミステリー賞の4冠を達成した今村昌弘氏の同名小説を映画化した「屍人荘の殺人」(木村ひさし監督)はミステリーやホラー好きにオススメ。大学生役の神木隆之介や浜辺美波が豪華ペンションの夏合宿で前代未聞の異常事態に巻き込まれる。ネタバレご用心の痛快作で、満足度の高さを保証する。

 大人向きのアニメ作品も見逃せない。軍港都市の呉を舞台にした「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」(片渕須直監督)はロングランを記録した名作の長尺版。戦火の下の庶民の生活を丁寧に描いた感動作で、ヒロインの声をのんが好演。遊郭の女性のエピソードが新たに追加されている。

 幅広い人気で半世紀以上も愛されてきた天才泥棒のルパン三世と仲間たちが「ルパン三世 THE FIRST」(山崎貴監督)で初3DCGアニメになった。考古学を愛するヒロインの少女レティシア(広瀬すず)が新鮮で、CGで立体感を獲得した面々が伝説の秘宝をめぐりパリ、メキシコ、ブラジルで活躍する。

 2020年、注目の話題作も紹介。3月6日公開の「Fukushima50」(若松節朗監督)は東日本大震災で福島第1原発に残った50人の実話を描く。出演は佐藤浩市と渡辺謙ら。想定外の極限状況に置かれた人たちの勇気や決断に感動間違いなし。

 ■洋画

 □映画評論家・おかむら良氏

 最大の話題は「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」(J.J.エイブラムス監督)。1作目の公開から42年、今回でスカイウォーカーを核とした物語が完結する。強力なフォースを持つメチャ強いヒロインのレイはどうなるのか。

 「ジュマンジ!」と叫びながらゲームの世界に取り込まれる、おバカで笑えるシリーズの最新作が「ジュマンジ/ネクスト・レベル」(ジェイク・カスダン監督)。4人の大学生が、ジャングルに加え砂漠、氷山などで必死のサバイバルを展開する。ドウェイン・ジョンソン演じるムキムキ冒険家のブレイブストーン博士はやっぱり頼りになるのだ。

 アニメといえば「アナと雪の女王2」がヒット中だが、クレイ・アニメ「映画ひつじのショーン UFOフィーバー!」(リチャード・フェラン&ウィル・ベチャー監督)も面白い。宇宙船が不時着して宇宙娘ルーラが地上に残され、ショーンたちと仲良くなって騒ぎに。ショーンはルーラをピザでつり、女捜査官がルーラを追うなど、1982年の大ヒット作「E.T.」を踏まえているが知らなくても十分楽しい。子供と見るならイチオシだ。

 落ち着いて楽しみたいなら、日本公開された仏映画で最大のヒットになった感動実話「最強のふたり」を、米でリメークした「THE UPSIDE 最強のふたり」(ニール・バーガー監督)。半身不随で車椅子生活の大富豪と、スラム街出身の看護人の間に絆が生まれる。ニコール・キッドマンが相変わらずきれい!

 仏映画「再会の夏」(ジャン・ベッケル監督)は、ゴンクール賞作家が書いた歴史小説の映画化。第1次大戦の英雄が収監された留置場の前でほえ続ける黒い犬。英雄を裁くためにきた軍判事の調査から、戦争で傷ついた人々の絶望と愛のドラマがみえてくる。86歳の監督が「人生は一度しかない」と訴えてくる感動作。

 2020年公開の注目作を紹介。映画スタッフのアンヌとレーサーのジャンを描いた1966年の大ヒット仏映画「男と女」のクロード・ルルーシュ監督が同じ俳優と音楽で53年後を描いたのが「男と女 人生最良の日々」。1月31日公開。主演のアヌーク・エーメは87歳、ジャン=ルイ・トランティニャンは89歳になったが、まだ頑張っている。