芸人えもやんが語る「せやろがいおじさん」が軌道に乗るまでの試行錯誤

【役者・芸人「貧乏物語」】

 朝のワイドショー「グッとラック!」(TBS系)で動画を放送中の「せやろがいおじさん」こと、芸人えもやん(32)。お笑いコンビ「リップサービス」のメンバーでもあり、ふんどし姿で沖縄の海で時事ネタを叫ぶ芸風をつかむまで、試行錯誤と節約の日々で……。

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 奈良の出身ですが、沖縄の大学に入るために移住しました。もともとは国語の教員になるつもりでした。でも、大学の先輩にお笑いやってる人がいて沖縄に芸人の事務所があると知り、気軽に所属できたので、すぐに入りました。大学で相方と知り合い、リップサービスというコンビを組んでお笑いを始めたんです。教員になる目標は教育実習で挫折し、卒業後はそのまま芸人になりました。

 沖縄には地元芸人が大勢いて、レベルも高く、「M―1グランプリ」のような県内のコンテスト番組もいくつかある。それで、あるコンテスト番組で4回優勝したんです。

 ただ、テレビやイベントなどの仕事はいただけても、東京と比べればギャラの単価は安いので、バイトの日々でした。

■10時間かけて作っても時給10円

 それで、沖縄でテレビに出ていても稼げないんだなぁと思ってユーチューブを始めたんです。ウェブライターのバイトをしていた時の上司が「独立して動画の事業をやりたい。一緒にやらない?」と誘ってくれたのでタッグを組み、その方がプロデュースしてくれて、僕はひたすらコンテンツを作ってアップしていきました。

 最初は芸人がやる普通のバラエティーを作ってましたが、全然ダメ。撮影して編集して10時間かけて作っても、500回再生くらい。収益が100円とか。時給に換算すると10円(笑い)。ユーチューブ用のパソコンのローンもあったし、その頃はキツかった。

 弁当を買う金もないから煮卵作って、リュックに詰めてユーチューブの撮影に出掛けたら、現場でリュックから出したパソコンが作動しなくて。よく見たら、煮卵の汁がパソコンに染みていた。修理に出しても、直らなくて……。節約のために作った煮卵で、高価なパソコン壊すって、訳が分からない。その時が一番キツくて、「芸人もユーチューバーも全部やめたろか!」と考えました。

 でも、12年芸人やってきて、煮卵で諦めるの絶対イヤだな、と。事務所の社長から借金してパソコンを買い、2台分のお金を払う二重ローン生活になりました。

■現在はテレビと動画の二足のわらじ

 ユーチューブで再生回数上げるのは相当、難しいと分かったので、その後はSNSで拡散しやすい、多くの人に共感を持たれる、あるある系のネタを始め、そこから時事ネタを海で、ふんどし姿で叫ぶように変わっていきました。知り合いの方に頼んでドローンを飛ばしてもらって。

 そしたら拡散してもらえるようになり、数万再生いくようになった。

 時事ネタをしゃべる動画をやる人はいますけど、海にドローンを飛ばして、ふんどし姿で叫ぶ人はいないと思います。意味分かんないですものね。

 1年経った頃に、開始前の「グッとラック!」のスタッフが気に入ってくれて、10月の番組開始から毎週、動画を放送してます。しかも、放送後にその動画をユーチューブにアップしてもいいというオファーでしたから、願ったりかなったり。自分で台本を書き、出演し、編集も自分でやって完全に仕上げてから、スタッフに納品する。最初は毎日放送と言われましたけど、絶対ムリです!

 テレビと動画の二足のわらじはこれからも続けていきたい。「せやろがいおじさん」が大きくなったら動画ファンの前でライブしたり、コンビのリップサービスも広まっていけばいいと思います。それが僕の生存方法かなと考えてます。

(聞き手=松野大介)

▽榎森耕助(えもり・こうすけ) 1987年9月、奈良県生まれ。沖縄国際大学在学中に金城晋也とお笑いコンビ「リップサービス」結成。「お笑いバイアスロン」(QAB)を14年から4年連続優勝。YouTubeチャンネル「ワラしがみ」を配信し、せやろがいおじさんとして人気に。動画は「グッとラック!」(TBS系)でオンエア中。