『ヒックとドラゴン』を支えた名撮影監督ロジャー・ディーキンス

『ヒックとドラゴン』を支えた名撮影監督ロジャー・ディーキンス

 ドリームワークス・アニメーション映画『ヒックとドラゴン』3部作の実写と見まごう光と影の美しさや臨場感あふれるカメラワークを裏で支えていたのは、アカデミー賞撮影賞にノミネートされること14回、『ブレードランナー 2049』で受賞を果たした名撮影監督ロジャー・ディーキンスだった。シリーズ完結編『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』のプロモーションのため来日したディーン・デュボア監督がインタビューに応じ、ディーキンスの貢献について語った。

【動画】映像のクオリティーも高い!『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』予告編

 ディーキンスはビジュアルコンサルタントとして3作全てに携わることになったが、これは彼の“誤解”が生んだ思わぬ幸運だったという。「彼はピクサーの『ウォーリー』に何日間か参加したと聞いていたから、僕たちに会ってほしいと頼んだんだ。実写の撮影監督だけど、CGIアニメーションのプロセスも良く知っていると思ってね。クリス・サンダースと僕は手描きアニメーション出身(ディズニーの『リロ&スティッチ』)で、第1作の監督に決まった時はCGIアニメーションの具体的なプロセスというものに明るくなくて」 「まず僕たちを驚かせたのは、構図やカメラの動き、どのレンズを使うかといった“カメラ部門”の決定が、ライティング(照明)をやる1か月も前に下されるということだった。撮影はライティングそのものであり、光と影がどう構成に影響を与えるかということだと思っていたから、CGIアニメーションのプロセスは逆行しているように思えた」というデュボア監督は、誰もが尊敬するディーキンスのような撮影監督なら、その橋渡しをしてくれるのではないかと期待したのだ。 「僕は『ウォーリー』でやった時のようなこと、2日くらい来て一緒に過ごしてくれるというようなことを頼んだつもりだったんだけど、彼は制作期間の全てにわたって参加してほしいと言っていると勘違いしてね。『OK。ぜひ参加したい』と返事をくれたが、僕たちが最初に思ったのは『どうしよう! ギャラを払えない!』ということだった(笑)。でも当時のボスであるジェフリー・カッツェンバーグ(※ドリームワークス設立者の一人)が『わかった。彼に映画全体に参加してもらおう』と言って、素晴らしいことが起きたんだ」

1/2ページ