【コミケ97】「宇崎ちゃん献血ポスター」炎上は勘違いが発端? その問題点を弁護士と運営に聞いた

引用元:オリコン
【コミケ97】「宇崎ちゃん献血ポスター」炎上は勘違いが発端? その問題点を弁護士と運営に聞いた

 先ごろ、献血キャンペーンの「胸強調」イラストがセクハラだとの指摘で炎上。「宇崎ちゃんポスター問題」として話題となった。一方、世界最大規模の同人誌即売会『コミックマーケット97(以下、C97)』が12月28日~31日までの4日間、東京ビッグサイトで開催。当会場では例年同様、献血者にポスターをプレゼントする『献血応援イベント』を実施中だ。そこで、献血応援イベントを運営する株式会社シーエージェントの中田大作氏と、“多様なマンガ・アニメーション発展のため”に活動するレイ法律事務所の舟橋和宏弁護士に、同問題について話を聞いた。

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■「宇崎ちゃんポスター」が法律違反だというのは“勘違い”

 毎回数十万人の来場者が集まるサブルカルイベント『コミケ』だが、企業ブースが出展されるようになったのは1995年の『C51』から。そして、企業ブース開催に尽力したのが当時コミケスタッフだった中田氏だ。「その頃、同人業界では『ポケモン同人誌著作権問題』と『ときめきメモリアル(アダルトアニメ)事件』があり、共に企業側が裁判で勝訴しました。そのため、コミケスタッフと米澤代表(当時)の中で“創作活動が委縮するのでは”という懸念がありました」と、同氏は振り返った。

 同人活動への逆風の中、企業色の強い『企業ブース』に対しては慎重な意見もあったが、中田氏は「お試しでやってみましょう」と関係者を説得。『企業ブース』開催こぎつけたのだという。そうまでして『企業ブース』にこだわった理由とは。

 「コミケの理念はアマチュアリズムですが、“文化”として醸成していくためにコンテンツの地位を高める必要がありました。その方策のひとつとして、企業というプロ集団と一緒にイベントを行うことによって、コミケをバプリックなモノに引き上げたかったのです」(中田氏)

 C51では6社だった企業ブースの出展数も、今では百数十もの企業が出展するまでに拡大。ここで販売される限定品などは来場者にとってお宝となっている。一般ブースと同様に来場者を集める企業ブースは、コミケをパブリックなモノに育てるターニングポイントのひとつとなった。そして、中田氏が次に取り組んだのが『献血応援イベント』だった。

 「当時、赤十字血液センターも“少しでも血液を集めたい”と活動をしていました。そこで、コミケでも何か協力できないかと考え、数十万人の人が集まるコミケで献血で行列をつくれないかと考えました」と、献血応援イベントのあらましを説明する中田氏。そして、「宇崎ちゃんポスター問題」で取りざたされている、法律が定める『自発的な無償供血』に違反しているのでは?という意見に対して「それは“勘違い”です」と語った。

 献血応援イベントで赤十字血液センターは献血バスとスタッフを出す。コミケは場所を貸す。そして、ポスターやグッズは各企業が寄付したもの。つまり、ここに関わる全ての人が手弁当による無償の活動であり、「献血に対しての返礼、売血、報酬だ」と批判するのはそもそも“勘違い”なのだという。だが、今回の騒動をキッカケに日本の献血事業が直面している問題を知って欲しいと中田氏は話した。

■赤十字によれば、関東における輸血の大半をコミケで集めた血液でまかなっている

 厚生労働省が発表している「年代別献血者数と献血量の推移」によれば、平成21年から献血量は右肩下がり。16歳~19歳の献血者数にいたっては、平成6年度に90万人だったのに対し平成29年は25万人にまで減少。日本の人口減少率以上の壊滅的な数字となっている。そんな厳しい現状の中、コミケ献血が果たした役割とは一体どんなものなのか。

 赤十字によれば日本の献血者の97% 強がリピーターで、2.5%が初回献血者。しかし、献血応援イベントの取り組みによってイベントの初回献血者数 が47%に上昇したという。この数字は、本イベントがいかに“献血”と“アニメ・漫画ファン”を繋いだかの証左となっている。実際、年末年始は帰省ラッシュ・Uターンラッシュで事故が増えるため大量の輸血用血液が必要になるのだが、「赤十字によれば、関東近郊おける輸血の大半をコミケで集めた血液でまかなっている」と中田氏は教えてくれた。

 では、今回のポスター騒動に関して、本来語られるべき「血液不足」という視点が抜けていることに不満はないか?と中田氏に聞くと、「まずは議論の俎上に載せられることが重要」と語尾に力を込めた。

 「8年間行ってきた『献血応援イベント』という社会活動がようやく認知され始めたわけです。私は“知られていないということは存在しないも同じ”だと思っています。我々はコンテンツを使って献血に興味を持ったか方の“背中を押す”のが役割ですが、その活動を広く知ってもらうための議論なら大歓迎です」

 それはまさに、“同人活動の場所を提供する”というコミケの存在意義と同じ。中田氏は「今後もこうした活動を続けていきたい」と前を見据えた。