紅白の視聴率一人勝ち時代は終了 大晦日特番は個人を狙う

紅白の視聴率一人勝ち時代は終了 大晦日特番は個人を狙う

【テレビが10倍面白くなるコラム】

 かつては、民放の大晦日の特番は、NHK紅白歌合戦に対して最初から「捨て試合」と諦めているようなところがあったが、最近は様子が違ってきた。紅白の向こうを張るのではなく、もともと紅白を見るつもりのない視聴者を狙って、成功しているのだ。

 今年は日本テレビ系が「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」、テレビ朝日系は「ザワつく!大晦日 一茂良純ちさ子の会」「生放送だよ!ぶっちゃけ寺年越しSP」、TBS系は「SASUKE2019大晦日」、フジテレビ系は「RIZIN」をぶつける。吉本、毒舌トーク、スポーツ・エンタメ、格闘技と、若者やおひとりさまをターゲットにしていることは、はっきりしている。

「今は家の中に何台もテレビがあって、リビングでは紅白を見ていても、子どもたちは自分の部屋で別の番組を見ていることは多いはずです。去年の紅白の視聴率が約40%だったといっても、一家に2台のテレビがあるとしたら、紅白にチャンネルを合わせているのは全体の2割程度かもしれないんです。民放は、番組評価を世帯視聴率から個人視聴率に移行していますから、大晦日の特番も、若い人が何人くらい見てくれるかが勝負。年配者を中心とした紅白の世帯視聴率がいくら高くても、もう関係ないんです」(テレビ誌編集デスク)

 夫婦と子供2人の標準世帯にテレビは1台――という時代に設計された世帯視聴率では、実際のテレビの見られ方を反映しなくなっている。去年の大晦日の「ガキの使い」の世帯視聴率は19・5%(関西地区)と「紅白」の半分だったが、個人視聴率ではいい勝負になっているのかもしれない。

 NHKも若者に紅白を見てもらおうと、あれこれ仕掛けてはいるのだが、今年は出はなをくじかれてしまった。地上波番組をネットでも流す「常時同時配信」のデモンストレーションとして、紅白をスマホやパソコンで見られるようにできないかと考えたようだが、高市早苗総務相に同時配信そのものに待ったをかけられてしまったのだ。NHKは配信事業の縮小など総務省の意向を盛り込んだ改革案を大急ぎで提出したが、認可判断は年が明けてからと先延ばしされ、紅白をテスト的に配信することも難しくなってしまった。

 高市大臣は同時配信でNHKがいよいよ一人勝ちになるのは許さんというわけなのだが、大晦日の夜もNHK紅白の一人勝ちという時代は終わった。

(コラムニスト・海原かみな)