Game*Sparkレビュー:『CONTROL』

引用元:Game Spark
Game*Sparkレビュー:『CONTROL』

!注意!本記事には『CONTROL』に関するネタバレが含まれています、閲覧にはご注意下さい。

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時間を操る特殊能力が楽しめるゲームパートと、クオリティの高いドラマパートが融合するアドベンチャー『Quantum Break』を生み出したRemedy Entertainment。同社の最新作となる『CONTROL(コントロール)』もまた、特殊な力を身に付けた主人公を中心に描きます。

しかし、特殊能力という共通点こそあるものの、相次ぐ異変や条理を超える展開、提示される情報をプレイヤー側が推測する構成などは、こちらも同社の代表作である『Alan Wake』を彷彿とさせます。

『Alan Wake』に衝撃を受け、また超能力という題材も個人的に好みな筆者にとって、この『CONTROL』は非常に気になる作品でした。既に海外向けとして展開していますが、字幕対応の国内向けPS4版が2019年12月12日に登場。英語が苦手な筆者もようやく遊べるようになり、早速『CONTROL』をプレイしました。

『CONTROL』の特徴は、大きく分ければ「超能力を駆使する戦闘」と「謎めいている物語」のふたつ。今回は、それぞれの魅力や実際に遊んで気になったポイント、それらを支える様々な要素についてのプレイレポートをお届けします。

本作は物語面の特徴も大きなウェイトを占めているので、一部のネタバレを含むレビューとなっています。また中盤までの展開を画像でも使用しているので、その点も予めご了承ください。なお、今回のレビューに使用したバージョンは国内向けのPS4版で、ハードはProではない通常のPS4です。

操作感は良好ながらシステム面では物足りないところも。字幕には要注意。
本作の主人公・ジェシーが持つゲーム面での大きな特徴は「超能力が使えること」ですが、この能力については後ほど個別で取り上げ、まずは彼女を操作して遊ぶ全体的なプレイ感に迫ります。

■主人公の操作は快適、ファストトラベルも心強い
移動は左スティックで行い、カメラ視点は右スティックで動かす、基本的なTPS操作ですが、反応や動きに関する不満はほとんどなし。真後ろへの振り向きにも一定のモーションが入りますが、体感で遅さを感じるほどではありません。

本作の舞台は連邦操作局の建物「オールデスト・ハウス」の中なので、階段での移動も多めですが、ジャンプで登れる程度の高さであれば階段の手すりをオートで乗り越えてくれます。地味ながら、ここは個人的に嬉しいポイントでした。

また移動については、序盤を越えるとファストトラベルが使用可能に。「施設の中なのに、ファストトラベルが必要なの?」と思われるかもしれませんが、「オールデスト・ハウス」はかなり広大かつ上下構造も多いので、徒歩での移動だけではかなり厳しめ。ロード時間(15~20秒ほど)こそ挟みますが、ファストトラベルがあるおかげで、移動に関するストレスはかなり軽減されていると思います。

■賛否が分かれそうな、便利すぎないマップ全体的なプレイを通して気になった点は「マップ」にあります。「オールデスト・ハウス」内の施設が一望できますが、目的地へのルートは分かりません。マップ上で黄色いマーカーが表示されるものの、繋がりが分かりにくいところもあり、情報を見落とすと右往左往することも。

とは言え目的地に達する手がかりは、ゲーム内にしっかりと置かれています。建物の随所には「NSC Power Plant →」のように書かれている案内板があり、初めての場所へ行く時には非常に助かります。

マップを表示しながら移動することもできますが、マップが画面を占める範囲は大きく、そのまま操作しやすい環境とは言えません。個人的には、自分の周囲を小さく表示してくれるミニマップが欲しいところでしたが、案内板などの手がかりを見つけて辿り着くのも楽しさのひとつ。ゲームによっては行き先をナビゲートしてくれることもありますが、丁寧すぎると興が削がれる面もあるので、このあたりは人によって賛否が分かれる点かもしれません。

■アイテムの場所は分かりやすく、資料は確認しにくい
「オールデスト・ハウス」の中には資料やアイテムが置かれていますが、その存在を知らせるアイコンは少し距離が離れていても表示されるので、「壁沿いに移動しないとアイテムを見落としてしまう」といった一部の3Dゲームに見られるような問題はありません。とはいえ、この施設自体がかなりの広さ。探索を意識しないとアイテムや資料を取りこぼすので、遊ぶ際には意識しておきたいところです。

施設の中に点在する資料は謎めく物語に関連したものも多いので、しっかりと集めたいところ……ですが、その数は多い一方で、確認にはちょっとした手間が。資料やアイテムを取得した時に名称が右下に表示されるのですが(一定時間で消える)、このタイミングでメニューを開いても取得した資料などにダイレクトに飛べるわけではなく、メニューのトップ画面が表示されるのみ。資料を確認するには、「収集物」を選んで該当グループを選択し、その中から直接探す必要があります。

最近の便利なゲームに慣れてしまった筆者の怠慢かもしれませんが、物語への理解や没入感を左右する資料系のアイテムは、もう少し手軽にアクセスできる手段が欲しかったと感じました。

■字幕や翻訳には不満点が。字幕設定を最初に触るのがお勧めデフォルトの文字設定。かなり小さめです
国内向けPS4版『CONTROL』は日本語に対応していますが、UI表示や字幕が日本語化されているのみ。日本語ボイスではないので、台詞の把握は字幕に頼る形となります。さらに、本作の字幕表示にはちょっとしたクセがあります。

ユーザーが使うディスプレイの大きさに左右されますが、デフォルトの字幕サイズは小さめ。また、背景の色味によっては文字が埋もれてしまう場合もあります。字幕サイズは設定で大きくできますし、字幕に背景を付けることも可能なので、『CONTROL』をプレイする方はゲーム開始直後に設定を変更するのがお勧めです。

そして、字幕に関する問題点はこれだけではありません。キャストの台詞に合わせて字幕が進むのは当たり前の話ですが、字幕を読み切る前に次の台詞へ切り替わってしまう場面がいくつも見受けられました。バッグログもないので、見落としは致命的です。

また、字幕はおおむね1~3行に渡って表示されますが、その改行位置が明らかに不自然な時も。一例ですが、「私はこのコントロールポイントから直接エネルギーを吸い上げられるとい」「う仮説についての」「提案書を、30ページ書いたわ。」という台詞が、「」ごとに1行ずつ表示されるシーンがありました。

翻訳そのものも、伝わりやすさへの配慮などをあまり感じず、必要最低限なテキストといった印象を受けます。物語自体が謎めいていますし、登場人物の大半が状況に翻弄されている立場なので、スムーズな説明がしにくい作品ではありますが、日本語表現へのアプローチとして残念な点があったのもまた事実。英語に慣れている方ならば、ボイスだけで把握できるので、あまり気にならない部分かもしれません。

海外ドラマのような『CONTROL』の物語と、超能力を駆使するバトルをチェック
■物語を伝える“表現”や“構成”にやや難アリ
『CONTROL』におけるストーリー展開は、率直に言えば変わりにくい構成となっています。例えば、ジェシーが「オールデスト・ハウス」に乗り込む場面からゲームが始まりますが「なぜこの施設に来たのか」「どういう立場なのか」については、この時点では明かされていません。

17年前に弟が連れ去られたこと、彼の消息を求めて連邦操作局を追い求めていたことはほどなく分かりますが、その理由や当時何が起きたのかといった詳細は、プレイ開始から数時間経ってようやく見えてきます。そのため、ジェシーとプレイヤーの間に、動機に対する姿勢がズレてしまう感覚を覚えました。

またジェシーは、主人公という立場ゆえに独白も多く、まるで「もう一人の自分」に話しかけるような言動も多々あります。こういったところも、プレイヤー側からすると混乱しかねません。その理由はのちほど明らかになりますが、彼女が言う“あなた”の存在を(納得は別にしても)受け入れないと、戸惑うことになります。

そしてこの「オールデスト・ハウス」は異変に襲われており、人的被害も続出。避難した人間同士も満足に連絡が取り合えず、それぞれが孤立する緊急事態に陥っています。異変の原因でもある「ヒス」は、その名称すら本作の物語の中で決まったほど、人にとって未知の存在です。そもそもこの施設は「ヒス」の研究に取り組んでいましたが、研究の途上にあるため、関係者でもその謎を明かしきれません。

この「ヒス」の影響を受けた人間は、攻撃性や超常的な能力を身に付けてジェシーに襲いかかる場合もあり、何の反応もなく宙に浮かんで静止するといったケースも。また、建物に干渉し、異界としか思えない変質を遂げている場所もあります。

「ヒス」の存在自体が謎に包まれており、登場人物の大半が現状すら正確に説明することができません。そのため新たな人物と会っても、混乱している現状が伝わる一方で、本質への理解はなかなか進まない展開が続きます。

主人公の動機を伏せたまま、その行動でパーソナリティを視聴者に伝えていく手法は、ドラマではポピュラーな構成です。また、謎めいた存在に翻弄されながら事態の解決や真相に近づく展開も、今や王道的と言えるでしょう。その構成やビジュアルから、本作の物語と追いかけている時は、海外ドラマを見ているような気分になります。

しかし、本作はあくまでゲーム。操作キャラに秘密が多く、状況も混迷と、謎が二重構造になっているため、プレイしているひとりのユーザーとしては、モヤがかかるような印象を物語面から受けました。そこに、前述の“日本語の不丁寧さ”が加わると、「つまり、どういうこと?」といった疑問符が浮かぶこともしばしば。大まかな物語のみでなく、事態の把握やキャラクターたちの心理/感情の理解までとなると、かなりの読解力が求められます。

逆に、ゲーム内に用意された資料も読み込み、いわゆる行間を推測で埋めていくのが楽しいプレイヤーにとっては、考察が楽しめる作品とも言えます。海外作品に慣れていたり、英語が堪能ならば、本作への理解はさらに進むことでしょう。

超能力は、銃撃と組み合わせることでより楽しく!

施設内を移動していると、「ヒス」に侵食された人間たちがジェシーの前に立ちはだかります。そんな彼らへの対抗手段は、「サービスウェポン」と呼ばれる特殊な銃と、数々の超能力です。

銃の弾数は無限。撃ち切るとリチャージが発生しますが、リチャージはリソースを必要としないので、弾薬の節約などを考えなくてOK。ガチのFPS・TPSファンにとっては残念な点かもしれませんが、リソース管理がストレスになるタイプのユーザーには嬉しいポイントです。また、撃ち切らなくても時間経過で弾数が回復するので、銃の取り扱いは全体的にストレスフリーです。

この銃は変形し、一撃のダメージが大きいものの射程が短かったり、連射性能に優れていたりと、最大で5種類の形態を持ちます。戦闘中にはワンタッチで2種類の銃を使い分けられ、メニューからそのセッティングをいつでも変更できます。

そして、銃と共に与ダメージの主役を担うのが、超能力の「投擲」です。ジェシーは、念動力を使って身近なオブジェクトを引き寄せ、それを敵に叩きつけてダメージを与えます。このダメージ量は銃と比べてかなり大きく、敵によっては一撃でノックアウトすることも。

照準を合わせて特定のオブジェクトを持ち上げることもできますが、捉えていない場合でも自動的に持ってきてくれるので、敵に注視したまま立ち回れます。オブジェクトによってはより大きな効果を生むものがあるので、ダメージを重視するもよし、立ち回りやプレイのテンポを取るもまたよしです。

ちなみに「投擲」に限りませんが、超能力を使うとエネルギーを消費します。このエネルギーは時間と共に回復しますが、使いすぎると一定時間使えなくなります。銃もリチャージがあるので、それぞれの回復サイクルを補うように戦えば、切れ目のない攻撃を継続可能。これは戦法的にも有効ですし、銃と超能力による連撃は少年心をくすぐり、テンションもアップ! また、銃や「投擲」で敵が怯んだスキに、近づいて近接攻撃──というプレイも、手応えがあって楽しめます。

序盤は銃だけで問題なく敵を倒せる難易度ですが、中盤に差し掛かる前からは戦闘の激しさが増し、立ち回りを考えないとあっという間にやられてしまう場合も少なくありません。敵も超能力を駆使したり、ロケットランチャーやグレネードが飛んでくるので、超常的な力が使えるからと慢心するのは非常に危険です。

敵の強力な攻撃を「シールド」で防いだり「回避」で一気に避けながら、「投擲」を繰り出して大ダメージを稼ぎ、エネルギーを回復させつつ銃撃でヘッドショットを狙う。超能力と銃撃を駆使する戦闘は、敵の適度な歯応えも相まって、戦闘だけ切り取っても十二分に楽しい手応えを与えてくれます。

しかも戦闘が終われば、銃や自身を強化するアイテムを獲得できる可能性があります。ダメージを負うことが多い場合は、体力や回復量を上げる強化アイテムが心強い存在になってくれます。与ダメージを増やしたり、リチャージ速度を上げるなど、用意されている効果は多彩。しかも上昇率がアイテムごとに異なるので、より良い強化アイテムを求めて戦い続ける「ハック&スラッシュ」的な楽しさもあり、戦闘が発生しても前向きな気持ちで楽しめます。

「また敵か……」ではなく「いい強化アイテム落とせ!」という気分で挑めるのであれば、モチベーションは大きく変わります。戦闘そのものも手応えがあり、(運が良ければ)ご褒美までついてくるとなれば、連戦もどんと来い! そして侮ってやられていくのも、お約束な流れでしょう。倒れた後のリロードがやや長め(約30秒前後)なのは、ちょっとだけ残念なポイントです!

超能力と銃撃を組み合わせたバトルスタイルは爽快感があり、手応えのある難易度なので達成感も味わえます。ジェシー自身の操作はほぼストレスなしですが、UIは少し物足りなさも。また、マップが入り組んでいるので、空間把握能力がないと少し厳しいかもしれません。

物語は、謎が気になる一方で、その謎の多さに置いていかれる気持ちになることも否めず。せめて、翻訳がもう少し丁寧ならば……と願ってしまうのは、英語が苦手なユーザーゆえでしょうか。本作の根底にある不気味さは、言葉がなくても充分伝わっていて、さすがRemedyと言いたくなる手腕です。考察が好きな方ならば、道中もあれこれ想像を膨らませつつ楽しめることと思います。

少々乱暴な言い方になりますが、『CONTROL』はアンバランスな作品といった印象を受けました。しかしそれは、優等生な秀作にはない、奇妙な魅力が宿っている証でもあります。

超能力を駆使するTPSアクションを楽しめるという点では、指折りの位置に食い込むことは間違いなし。その他の点と相性が合うかどうかが、判断の分かれ目となるでしょう。個人的には、もっといろんな超能力を駆使するゲームが遊びたいので、『CONTROL 2』に期待したいところです。その時には、もうちょっとだけローカライズに力を入れて欲しい!

総合評価: ★★
良い点

・超能力と銃撃を組み合わせる、手応えのある戦闘
・カスタマイズや成長で、自分好みの戦いを模索できる
・強化アイテム探しも楽しいハクスラ的要素
・異変/異質を感じさせる演出

悪い点

・翻訳の質が良くない
・全体的に不親切な字幕
・ゲームとして見ると、没入しにくい物語
・一部のUIが洗練されていない

「Game*Sparkレビュー」ではハードコアゲーマーなライターから読者に向けて、オリジナルレビューをお届けします。対象となるタイトルはAAAからインディーまで、ジャンルやプラットフォームを問わず「ハードコアゲーマーのアンテナが反応するゲーム」です。

このレビューでは、3段階評価をベースに「良い点」「悪い点」を挙げながら総評を下します。最低評価は「難アリ/オススメできない」、中評価は「ふつう/そこそこオススメ」、最高評価は「とても面白い/とてもオススメできる」に当ります。「プレイレポート」として公開している記事では、本企画と同様の評価を付けません。また、記事の性質上、ストーリーなどの「ネタバレ」を含む場合がありますので、閲覧の際はご留意ください。

レビュー記事に使ったゲームは「編集部およびライターが購入した物」であり、デベロッパー/パブリッシャーから提供されるゲームソフトは利用しません。また、「Game*Sparkレビュー」は「PR記事」と一切の関係を結ばず、すべての評価内容がライターの価値観に基づきます。特定の企業やプロモーション、ユーザーコミュニティにも影響を受けません。

なお、マルチプラットフォームで展開されている作品においては、対応している機種のうちのひとつのエディションのみをプレイし、評価します。そのため、本文内でプレイした際の使用機種についても明記しています。 Game*Spark 臥待 弦