『アナ雪』日本語吹き替え版が高評価 演出/音楽演出・松岡裕紀が語る「技術よりも突き詰めた芝居」

引用元:オリコン
『アナ雪』日本語吹き替え版が高評価 演出/音楽演出・松岡裕紀が語る「技術よりも突き詰めた芝居」

■「Film makers(映画と人 これまで、そして、これから)」第30回 松岡裕紀 演出/音楽演出

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 11月22日の公開以来、早くも興行収入86億円を突破するなど、前作に続き現象となっている『アナと雪の女王2』。美しい映像に共感しやすいキャラクター、さらにシンプルながらも力強いストーリーラインなどさまざまなヒット理由はあげられるが、日本語吹替版のクオリティーの高さも、ヒットの大きな要因となっているのではないだろうか。前作同様、吹替版の監督を務めた松岡裕紀氏に話を聞いた。

■『アナ雪』ならではの表現の面白さ

 前作、エルサ役の松たか子が劇中で歌った『レット・イット・ゴー~ありのままで~』は、公開前から大きな反響を呼んだ。そのほか、アナ役の神田沙也加をはじめ、吹替版の出来の良さは評判になり、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が行った「『アナ雪』を吹替えと字幕のどちらで見たか?」というアンケートでは、7割以上が“吹替版”と回答するなど、日本語吹替版の果たした役割は大きかった。

 松岡氏はこれまで、『トイ・ストーリー』シリーズや『塔の上のラプンツェル』シリーズ、『アラジン』、『ライオン・キング』など数々のディズニー作品の吹替版の演出を担当してきたが「『アナと雪の女王』が作品として面白いなと思ったのは、歌だけでその人の進む道を表現しているところ。例えば、パート1でエルサは自分が魔法をコントロールすることができずすごく傷つきますよね。それで城を出てスノーマウンテンに向かうわけですが、そのとき『レット・イット・ゴー』を歌います。歌いはじめと歌い終わりの表情が全然違いますよね。あの歌だけでエルサの気持ちが切り替わる。そういう表現方法はこれまでの作品とは明らかに違うなと感じました。以前担当した『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』に共通する面白さです」とポイントとしてあげる。
 
■大切なのは日本の文化にアジャストさせること

 では実際、こうした表現の面白さを吹替えで伝えるためにはどんな工夫が必要なのだろうか。
 
 「当たり前のことですが、しっかりと意図を汲んだ日本語で伝えること。日本語と英語は文法も違うので、絵の口の動きに合わせて情報をしっかりと伝え切るのは難しい。さらに文化的な違いもありますよね。例えば料理のシーンで『おいしい』という表現に材料を言うセリフがあったとします。アメリカでは一般的な食べ物でも、日本ではあまりなじみがなければ、言葉を変えなければ美味しさは伝わりません。その意味で“通訳”ではなく“翻訳”がとても大切なのです」。

 日本人を捉えた翻訳。さらにそれを感情に乗せて表現する演技力も求められる。

 「日本語の吹替えに限ったことではないですが、演じる人間はそのキャラクターをしっかり理解することがとても大切です。エルサとアナは性格が違うと言葉遣いも当然変わってきますよね。収録では台本はありますが、微妙なニュアンスなどは、その場で演じる声優さんに合わせて変化していくこともあります。そこでも演じる側の理解度がとても大切です」。