「風の谷のナウシカ」歌舞伎化 新橋演舞場、6日から 尾上菊之助「ジブリファンも納得できる作品に」

引用元:産経新聞

 宮崎駿(はやお)の漫画「風の谷のナウシカ」(全7巻)が昼夜通しの新作歌舞伎として、東京・新橋演舞場で12月6日から上演される。歌舞伎俳優、尾上菊之助の「ぜひ歌舞伎として上演したい」という強い思いから約5年前に動き出した。ナウシカ役の菊之助とクシャナ役の中村七之助らが作品に寄せる思いを語った。(水沼啓子)

 テレビで初めてアニメーション映画版を見たという菊之助は、「絵の力、ナウシカという女性が持っている力強さ、そして可憐(かれん)さにひかれた。(その後)原作を読み、そのテーマ性や壮大さにますますひかれた」と語った。

 菊之助は、原作には戦争やエネルギー、環境、核、遺伝子の問題まで描かれていると指摘。「歌舞伎化したときにどうなるのか、自分自身わくわくしている。どんな化学反応を起こすのかが楽しみ」と話した。

 映画版を10回以上見ているという七之助は、菊之助から出演を依頼され、即快諾。クシャナについて「格好良く、でも、最初は悪人として出てくる」。一方で、「この道を進まないといけないという、かわいそうな女性でもあると思う」と話し、力強さだけでなく心の揺れも演じていきたいとした。

 鈴木敏夫スタジオジブリ代表取締役プロデューサーは「本当に精魂込めて、自分の思っているものをすべてぶつけた作品」と宮崎監督の思いを披露。これまで監督は実写映画化の話などをすべて断ってきたため、歌舞伎化についても「当然、断ると思っていた」が、「『やろうよ』と言ってくれた」と明かした。

 新作歌舞伎版の題字(見出し)は、鈴木氏が書いたもの。「歌舞伎の世界に近づけたロゴはできないかと、そんな考えで書いた」と語った。

 脚本には、原作が忠実に描かれているという。演出家で劇作家の「G2」(じーつー)は「あくまで歌舞伎という手法にのっとってやりたい」とし、原作に登場する空を飛ぶシーンや王蟲(オーム)、巨神兵などではケレン味を出すという。

 菊之助は「ナウシカが主人公だが、クシャナも主人公に匹敵するほど大事な役なので、2人の関係を楽しみに見てほしい」「歌舞伎ファンだけでなく、ジブリファンにも納得できる作品に仕上げたい」と意気込んでいた。12月25日まで。

 【あらすじ】高度産業文明を滅ぼした戦争(「火の7日間」)から1千年。汚染された大地には有毒な瘴気(しょうき)を発する菌類の森「腐海」が広がり、巨大生物「王蟲」が生息していた。敵対するトルメキア王国と土鬼(ドルク)諸侯国連合帝国の2大列強国と、辺境の「風の谷」やペジテ市が主な舞台。世界を焼き尽くした兵器「巨神兵」をめぐり再び戦いが始まる。風の谷の族長の娘、ナウシカが愚かな戦争や腐海・王蟲に立ち向かう。

【用語解説】「風の谷のナウシカ」

 映画監督で漫画家、宮崎駿が昭和57年に雑誌「アニメージュ」で連載開始、平成6年に完結した大作漫画。全7巻。日本漫画家協会賞大賞。連載途中の昭和59年、劇場版アニメーションとして映画化された。