『スカーフェイス』50秒に1回「FUCK!」を連呼!サイコーにサイテーな真性不良映画※注!ネタバレ含みます。

引用元:CINEMORE
『スカーフェイス』50秒に1回「FUCK!」を連呼!サイコーにサイテーな真性不良映画※注!ネタバレ含みます。

 キューバからやってきた青年トニー・モンタナ(アル・パチーノ)が、麻薬王として君臨し、そして自滅していくまでを描いた『スカーフェイス』(83)は、サイコーにサイテーな真性不良映画だ。

 何がスゴイって、映画で連呼される「FUCK!」の回数がスゴイ。その数、何と197回!上映時間が170分だから、およそ50秒に1回は「FUCK!」と叫んでいる計算になる。これは公開された1983年時点で、最も「FUCK!」ワードが登場する映画となった。2011年には、『スカーフェイス』のブルーレイが発売されることを記念して、「FUCK!」だけを集めた特別予告編「FUCK’in トレーラー」が作られたほど。

 電動ノコギリで人を惨殺しちゃうような、暴力シーンもスゴイ。その過激さゆえに、MPAA(アメリカ映画協会)は『スカーフェイス』をX指定(成人映画)に。これを受けて監督のブライアン・デ・パルマは再編集を行うが、結果は変わらずX指定。二度目の再編集も、三度目の再編集もX指定が揺らぐことはなく、頭にきたデ・パルマはこれ以上の編集作業を拒否。本物の麻薬担当官を招聘してMPAAとのミーティングを行い、「この映画は、麻薬地下組織の実態を正確に描写しており、反麻薬映画として作られている。多くの観客に鑑賞してもらうべきだ」と主張した。

 その甲斐あって、なんとかR指定(17際未満は親の同伴が必要)の認可を得るが、要は『スカーフェイス』の暴力描写は、成人映画級のヤバさだったということ!真性不良映画の名にふさわしいエピソードだ。

アメリカを代表するフィルムメーカーたちによって生み出された『スカーフェイス』

 もともと『スカーフェイス』の企画は、プロデューサーのマーティン・ブレグマンが、テレビの深夜放送で『暗黒街の顔役』(32)を観たことに始まる。アル・カポネをモデルにした、ハワード・ホークス監督による傑作フィルム・ノワールにすっかり感激したブレグマンは、この作品のリメイクを作ることを決意。『ゴッドファーザー』(72)、『セルピコ』(73)、『狼たちの午後』(75)など、数々の犯罪映画で印象的な演技を披露してきたアル・パチーノを主演に迎えることを念頭に、リメイクのプロジェクトが始動する。

 ブレグマンが監督に指名したのは、ブライアン・デ・パルマ。『ファントム・オブ・パラダイス』(74)、『キャリー』(76)など、アクの強い映画を手がけてきた“カルト・ムービーの帝王”だ。デ・パルマは意気軒昂にシナリオを書き上げるが、ブレグマンが納得するものが出来上がらず、志半ばで降板。過去に『セルピコ』『狼たちの午後』でアル・パチーノと仕事をしているベテラン、シドニー・ルメットが新しい監督として招聘される。

 ルメットは、アル・カポネをモチーフにした古典的ギャング映画を、コカインに蝕まれる現代の物語として再構築することを提案。脚本には、自身がコカイン中毒者だったというオリバー・ストーンに白羽の矢が立った。オリバー・ストーンといえば、後に『プラトーン』(86)、『7月4日に生まれて』(89)でアカデミー監督賞を2度受賞するほどの名匠だ。

 しかしオリバー・ストーンが書き上げたシナリオは、シドニー・ルメットの意に反して、あまりにも血と暴力に彩られた物語だった。ルメットは監督を固辞し、再びブライアン・デ・パルマに御鉢が回ることになる。

 『スカーフェイス』は、ブライアン・デ・パルマ、シドニー・ルメット、オリバー・ストーンという、アメリカを代表するフィルムメーカーたちによって生み出されたのだ。