片岡秀太郎、顔見世興行通算70回の偉業に「僕の役者人生はすべて南座とつながる」

引用元:スポーツ報知

 上方歌舞伎を代表する名女形として知られる片岡秀太郎(78)が、30日に京都・南座で開幕した「吉例顔見世興行」(26日まで)で通算70回出演の“偉業”を達成。このほどスポーツ報知などのインタビューに応じた。

 「感無量です。でもこれが最後にならないようにしないと。僕の役者人生は全て南座とつながる。(顔見世は)命のような存在かもしれません」と感慨深げだ。初出演は1950年、9歳のとき。名子役だった。「実録先代萩」の幼君亀千代役。「戦災の影響で東京の役者さんの中、関西から参加したのが自分一人で。あまりの緊張で舞台上で見えないようおう吐しながら出たのが懐かしい」壮絶な顔見世デビューを振り返る。

 出演回数を積み重ねた節目の今年。昼の部「輝虎配膳」で軍師・山本勘助の母越路を演じている。難役の三婆の一つだ。92年に養子に迎え入れた片岡愛之助(47)が長尾輝虎(上杉謙信)を演じる。

 今年7月には女形の重要な脇役として、また長年にわたる上方歌舞伎の技芸伝承により人間国宝に認定された。「実は昨年そろそろ役者をやめ、後進の指導に専念しようかと思った」と役者廃業が頭をよぎったことを明かす。「でもこれで引退するわけにはいかなくなりました。スポーツとも似ている。実際に現役として舞台に立ち続ける中でこそ分かることがある。真剣に後進、関西歌舞伎と向き合っていたい」と思い直した。

 若手に金言 若手には自身も教わったように「『波には乗れ。調子に乗るな』と言います。特に愛之助はもっと古典をマスターしなければなりません。まだまだです」とあえて厳しい言葉を使った。(内野 小百美)

 ◆初日大入り 

 吉例顔見世興行が初日を迎えた南座には着物姿のファンらが詰め掛け、劇場は大入り。幕が上がり役者が舞台に姿を見せると、拍手とともに威勢のいい掛け声が飛んだ。千秋楽は26日。昨年に耐震改修工事を終えた南座の新開場一周年記念と銘打つ公演で、昼と夜それぞれ4演目の2部構成。昼の部の「仮名手本忠臣蔵」七段目では、片岡仁左衛門が親子孫3代で共演する。

 ◆片岡 秀太郎(かたおか・ひでたろう)1941年9月13日、大阪府生まれ。78歳。13代目片岡仁左衛門の次男。46年「吉田屋」の禿(かむろ)で本名・片岡彦人(よしひと)で初舞台。56年「河内山」の浪路で2代目片岡秀太郎を襲名。兄は5代目片岡我當、弟は15代目片岡仁左衛門。養子に6代目片岡愛之助。屋号は松嶋屋。

報知新聞社