「ケチャップついてるやん!」「まだ伴奏です」 大人気アフレコCMが12年ぶりに復活したワケとは?

引用元:オリコン
「ケチャップついてるやん!」「まだ伴奏です」 大人気アフレコCMが12年ぶりに復活したワケとは?

 「ケチャップついてるやん!」「まだ伴奏です」──。まるで映画のようなワンシーンに、関西弁のセリフをのせた『ホットペッパーグルメ』のアフレコCMが、12年ぶりに復活した。現在、動画再生数は110万回を超えており、SNS上では「懐かしい」「復活ほんとうれしい」「相変わらず面白い」といった声が続出している。なぜこのタイミングで、アフレコCMを復活させたのだろうか。リクルートコミュニケーションズのクリエイティブディレクター・萩原幸也さんに聞いた。

【写真】「スパゲティ食べたでしょ?」「食べてないよ」のやり取りが好評だった「食べました」篇など、過去の人気アフレコCMを一挙紹介

■アフレコCMは、いかに原作の世界観を壊さずに取り入れるかが課題

 そもそもアフレコとは、ドラマや映画などを無声で撮影したあと、映像に合わせて声や音を録音する手法のこと。アフターレコーディングの略で、和製英語とされている。

 またアフレコは、アニメーション作品の制作においても取り入れられている。今年放送されたNHK連続テレビ小説『なつぞら』でも、主人公のなつ(広瀬すず)たちが制作したアニメに声をのせるアフレコシーンが多く展開されたので、記憶に残っている人も多いだろう。

 近年では、CMなどにもアフレコが多く使われている。2012年から始まった「家庭教師のトライ」のCM「教えて!トライさん」は、アニメ『アルプスの少女ハイジ』の原画と“トライさん”の絵の合成に合わせてアフレコが採用されており、ネット上では「おじいさんがかわいいw」「トライさんのハイジCMおもしろい」などの声が寄せられている。

 一方、7年以上も続くなどシリーズ化していることに対し、「ハイジをリアルタイムで見た世代としては、小馬鹿にしているとしか思えない」「パロディがしつこい」といった否定的な見方もあり、いかに原作の世界観を壊さずにアフレコを取り入れるかが課題となっている。

■“マッドマックスのワンシーン”ではなく、実は全てオリジナルで制作

 アフレコCMの先駆けとされているのが、『ホットペッパーグルメ』のシリーズCMだ。2000年にクーポンマガジンとして創刊した『HOT PEPPER』は、新潟、長岡、高松版から始まり、約2年かけて全国に展開。そのタイミングで初めて打ち出されたのが、アフレコCMだという。

 当時の状況について、萩原氏はこう語る。「当初、弊社では違うテイストのCMを考えていたようですが、担当してくださったクリエイティブディレクターの山崎隆明さんの提案で、アフレコCMに決まりました。山崎さんは幼少期から、ニュース映像などの音声をオフにして、自分でセリフを考えてアフレコに挑戦したりしていたそうなんです」

 2002年4月に放送された最初のアフレコCMは、「食べました」篇だ。ある車内にいる男女の「スパゲティ食べたでしょ?」「食べてないよ」「ケチャップついてるやん!」「食べました!」といったコミカルなやりとりが、当時大きな話題を集めた。また同CMは、第42回ACC全日本CMフェスティバルで金賞を受賞するなど、映像作品としても高く評価された。「放送された当時、僕は学生でしたが『HOT PEPPER』のアフレコCMは、まさに伝説のCMだと思って見ていましたね」(萩原氏)

 2003年には、暗闇の森の中で泣き叫ぶ男女の会話が注目を集めた「喜んで」篇を展開。2005年には、クラシック映画を連想させるような描写の「まだ伴奏」篇を放送するなど、2007年までに39作品ものアフレコCMを制作したという。「現在でも、YouTubeや『ニコニコ動画』などでパロディ動画が投稿されているんですよ。長年にわたり、楽しんでいただけてこちらもうれしい限りです」(萩原氏)

 一方、12年ぶりに復活したアフレコCMに対し、SNS上では「ホットペッパーのマッドマックス使ったCM見た」「ホットペッパーの新しいCMって、完全にマッドマックス だよね?」といったコメントが相次いでいる。だが萩原氏によると、アフレコCMの映像は“映画のワンシーンを採用”しているのではなく、全てオリジナル作品で制作されているという。

「撮影から先に行うのですが、その時点ではまだ何もセリフは決まっていないんです。撮影後、映像編集をしながらセリフを考えてアフレコしています。先にセリフが決まっていると、アフレコCMならではのギャップが消えてしまうんですよね」(萩原氏)

 また映像のチョイスからセリフの内容、アフレコの“声”までも、全て山崎氏が担当していると、萩原氏は明かす。「もともと山崎さんは関西出身ということもあり、緩い関西弁で制作されたそうです。標準語でのアフレコにも挑戦したそうですが、面白くなかったみたいで…(笑)」