『M-1』15回目で迎えた新時代 決勝戦で見せた“多様性”と“躍動”への期待

引用元:オリコン
『M-1』15回目で迎えた新時代 決勝戦で見せた“多様性”と“躍動”への期待

 “令和”初の漫才日本一を決める『M-1グランプリ2019』(ABC・テレビ朝日系)が22日に生放送された。審査基準は「とにかくおもしろい漫才」。シンプルなフレーズだが、その言葉の意味が感じられるほど、5040組から決勝に上がってきたインディアンス、ミルクボーイ、オズワルド、見取り図、かまいたち、ぺこぱ、からし蓮根、ニューヨーク、すゑひろがりず、敗者復活戦から勝ち上がった和牛の10組が多種多様な漫才の形を披露し、例年以上の盛り上がりを見せた。

【写真】司会を務めた上戸彩

 同大会は「日本一の漫才師を決める大会」として2001年にスタート。2010年の第10回開催で一旦終了し、2015年に5年ぶりに復活した。司会はお笑いタレントの今田耕司と女優の上戸彩が担当し、審査員はオール巨人、松本人志、上沼恵美子、中川家・礼二、富澤たけし、立川志らく、塙宣之の7人が務めた。

 トップバッターのニューヨークは歌ネタで勝負。上沼恵美子が「ワンコーラス目は普通に下手な歌だと。どんどん好感度が上がっていく。歌だけで引っ張っていくってすごいことだな」と賛辞を送ると、塙も「トップバッターでこれだけお客さんを沸かせたっていうところで。入り方とかボケとかバランスがよくて、よく計算して作っている」と高評価するなど、初出場でトップバッターという重圧がかかる中、見事にその務めを果たした。

 続けて登場したかまいたちは“言い間違い”をテーマに、完成された“掛け合い”で圧倒。松本が「いや、まあちょっと圧巻でしたね。涙出るくらい笑って。やっぱり、いいコンビやな」と話すと、山内健司から「志らくさんは降りてほしい」と“口撃”されていた志らくも「私、生放送で『15点つけてやるからな』と言っていたんですけど、参りました」とうなり、上沼も「お見事。漫才もうまいですが、小さなものを大きく広げていく力を持っている。これはもうグランプリですね」と絶賛した。

 3番手は敗者復活を勝ち上がった和牛。3年連続準優勝で優勝候補の筆頭にも挙げられるなど、重圧がかかる中での挑戦でも、見事に自分たちのネタをやりきった。その姿勢に塙は「また新しいネタを見させていただいて、毎年進化しているというか。型がない。いろんなことを毎年やるっていうのが、和牛の魅力なので。和牛とかまいたちがちょっとすごすぎるので、ほかの出演者が大変」と分析し、巨人も「後半がグッと盛り上がって。最後にちゃんと持っていって、うまいこといって、安心感がありましたね。川西(賢志郎)くんの普段のツッコミよりもボキャブラリーが少ない」と絶賛と期待の高さゆえの注文をつけた。

 実力派2組に続けて、登場したのは鼓を持った異色のコンビ・すゑひろがりず。狂言や能の言い回しを漫才に応用する実験的なスタイルを『M-1』という舞台で、どう判断すればいいのか、審査員の揺れる反応も見られながら、その着想点に賛辞が相次いだ。「どう見たらいいんだっていうのはあるんですけど、漫才は笑わせればありだと思っているので、彼らが上位にいって、漫才をぶち壊してもらいたい」(富澤)「完成されすぎてM-1の漫才じゃないので。92点でよかったのか、もっと上なんですよ」(上沼)「単純にたぶん、一番おもしろいんちゃうん(笑)」(礼二)

 5組目のからし蓮根も熊本弁バリバリの漫才で、そのフレッシュさが上沼にハマった。「ファンです。初々しいね、和牛には悪いだけど。横柄な感じがしましたけど、からし蓮根には初々しさを感じました。『てっぺんを取ったろう』っていう。それがいいの。それが『M-1』じゃないの!」。6組目の見取り図は2年連続の『M-1』決勝で、昨年以上に磨きをかけた漫才を見せた。松本が「すごく今年良かった」と話すと、塙も「たぶん、去年から今年、さらに来年、どんどんお客さんが見取り図のことを認識すればするほど、面白くなっていく」とさらなる飛躍に期待を寄せた。

 そして迎えた7組目のミルクボーイ。「コーンフレーク」を題材に、話が行ったり来たりを繰り返す「リターン漫才」で史上最高得点(7人での審査員体制)である681点をマーク。松本が「あのなんでしょう。いったりきたり漫才。なんか揺すぶられたな。これぞ漫才っていう、久しぶりに見せてもろた」と絶賛すると、富澤も「おじさんが、コーンフレークだコーンフレークじゃないっていうので笑えるのが一番よかった」と笑いながら2人の漫才の妙を語った。

 ミルクボーイの爆発力に揺れる中、オズワルドも自分たちのスタイルをしっかりと見せた。礼二が「ミルクボーイのあとで、よくここまでやったなと。しっとりしたパターンで。後半に尻上がりしていく」と指摘すると、松本も「ちょっと90点辛めなのかなと。結成5年ですごいよね。将来が。まだまだでるはずなので、今年はこれくらい」と期待の新星にエールを送った。トリ前のインディアンスもハイテンション漫才でボケ倒し、会場の笑いを誘ったが、礼二が「テンポあってやりこんでいる感じ。素の部分の面白さがあんまり見えないのかなと。淡々とボケているだけじゃ悲しいかな」と玄人目線で指摘。今大会のレベルの高さを感じさせる瞬間のひとつとなった。

 トリで登場したぺこぱは、ひたすらボケに対して、ツッコミが「~とは言い切れない」などと返して寄り添うという漫才の形が功を奏した。上沼が「ツッコミ大好き。新しい。私もよく動くんでね、芸風似ているんですけど」と話すと、志らくは「最初見た時は大嫌いかなと思ったら、どんどん好きになっていく。大好きになった。決勝がものすごい楽しみ」と賛辞。松本も「これは、ノリツッコまない。新しいところ持ってきましたね。和牛敗れるっていう、衝撃的なところを見ましたね」と感慨深げに語った。

 ファイナルステージに進む前に、上沼がふとつぶやいた。「今年面白いです。すごいです。初めて拝見するコンビばっかりなので、今年は面白いですね。こんな上手な人ばっかり。久しぶりに興奮しています」。その言葉通り、決勝全組が躍動していた今大会。令和という新しい元号を迎え、『M-1』も新時代の到来を感じさせる内容だった。