梅宮辰夫さんの追悼や! 「仁義なき戦い」一気見します 桂春蝶の蝶々発止

引用元:夕刊フジ
梅宮辰夫さんの追悼や! 「仁義なき戦い」一気見します 桂春蝶の蝶々発止

 【桂春蝶の蝶々発止。】

 俳優の梅宮辰夫さんが12日、慢性腎不全で亡くなられました。享年81。私にとって、梅宮さんは特別な俳優さんです。映画をこよなく愛する春蝶。そんな私、史上最も回数多く見続けてきたのが「仁義なき戦い」シリーズです。

【写真】松方さんの遺影に語りかける梅宮辰夫さん

 あの鬼才、クエンティン・タランティーノ監督が「最も影響を受けた作品」と語り、オマージュが名作「レザボア・ドッグス」であることはあまりにも有名ですね。

 深作欣二監督の金字塔「仁義なき戦い」で、梅宮さんは1作目の若杉寛役、3作目の「代理戦争」、4作目の「頂上作戦」で明石組の岩井信一役で出演されておられますが、この岩井がまた怖い役なんですね(笑)。

 「仁義なき戦い」は東映の任侠映画の中でも「実録モノ」と言われるジャンルで、明石組とは山口組。岩井はご存じ、あの山口組内で「ヤマケンにあらざれば、ヤマグチにあらず」と言われた、山本健一親分がモデルであります。

 山健親分が元々眉毛が薄かったため、梅宮さんは眉毛を全剃りして臨んだ。撮影後、帰宅して娘を抱っこしたら、普段は決して泣かない幼女時代のアンナさんが、「ギャー!!」っと言って号泣したエピソードが残っています。それくらい眉なしのインパクトは絶大やったんです(笑)。

 岩井の名セリフは、煮え切らない広島のある親分に詰めよるシーン。「あんたそれでも極道か? それとも何かそのへんのタクシー屋のおっちゃんか? どっちや」。これですね!

 「仁義なき戦い」は振り切って笑えるシーンも沢山あるのです。まだ見てない方は、ぜひとも、ごらんください。

 パパパーン! パパパーン!と、銀幕を斬り裂くようなトランペットが流れ、その後、ズンズンズンズンズンズンズンズン…と腹に響くテーマ。まるで幾千ものハイエナの群れが獲物を狙う不気味さを与えてくれます。

 にらみ付ける菅原文太、ほくそ笑む金子信雄、股間をかき続ける千葉真一、お調子者の田中邦衛、ニヒルな成田三樹夫、狂人と化した松方弘樹、悲しきヒットマンの北大路欣也、血まみれになる小池朝雄、拳銃で蜂の巣にされる川谷拓三、実は一番キレたら怖そうな渡瀬恒彦、不動の貫禄を見せつける小林旭、そして、そして我らが「眉なしの梅宮辰夫」。

 役者はみな若手で金がなかった。銀幕の世界で生き残ってやろう…という野望と渇きが、戦後の広島で、自らの力でのし上がってゆくしかなかった青春やくざ群像と重なり、とてつもない名作となっていったのです。

 いまの平和な世の中で、ああいった作品は絶対に生まれることはないと思いますね。折しもアマゾンプライムで「仁義なき戦い」が、このほど配信されました。

 梅宮さんの追悼や! 今から一気見します!

 ■桂春蝶(かつら・しゅんちょう) 1975年、大阪府生まれ。父、二代目桂春蝶の死をきっかけに、落語家になることを決意。94年、三代目桂春団治に入門。2009年「三代目桂春蝶」襲名。明るく華のある芸風で人気。人情噺(ばなし)の古典から、新作までこなす。14年、大阪市の「咲くやこの花賞」受賞。