村上春樹「個人的にはかなりヒット」ランニング中に聴いている曲は?

引用元:TOKYO FM+
村上春樹「個人的にはかなりヒット」ランニング中に聴いている曲は?

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO~冬の炉端で村上SONGS~」が12月15日(日)に放送されました。第10回目となる今回は、村上さんが所蔵するレコードのなかから、最近入手したものを中心に選曲。さらに、番組Webサイトで募集した「村上春樹さんに聞いてみたいこと、言いたいこと」に寄せられたリスナーからのメッセージにも応えました。本記事では、後半4曲と“今日の最後の言葉”についてお話しされた概要を紹介します。

◆Keith Loving and the Family「De-Twah」

これは買ったんじゃなくて、もらいものです。ニューヨークに行ったとき、ケネディ空港からマンハッタンのミッドタウンにあるホテルまでリムジンに乗ったんですが、その運転手からもらいました。

僕は普通リムジンなんて使わないんだけど、そのときは出版社の招待だったので、リムジン・サービス付きだったんです。道路が渋滞していて、暇つぶしに黒人の高齢の運転手と世間話をしていたんですが、「おれ、日本には何度も行ったよ」と言う。「どうして?」と訊くと、彼はジャズ・ギタリストで、いろんなバンドに入って来日公演していたんだそうです。

「ギル・エヴァンズのバンドでも行ったし、ロバータ・フラックのバンドでも、グレゴリー・ハインズのバンドでも行ったなあ」「ギル・エヴァンズ楽団で来日したっていうと、川崎燎がギターを弾いてた頃?」「ああ、そうだよ。リョウと2人で一緒にギター弾いてた。それからミネっていうサックス奏者がいたね」「峰厚介?」「うん、そうそう」……そんな話になって、盛り上がりました。

彼はキース・ラビングといいまして、ロバータ・フラックの「Feel Like Makin’ Love」でも、バックでギターを弾いてます。今でも息子たちとバンドを組んで現役で活動しているけど、ミュージシャンだけでは食えないので、アルバイトでこうしてリムジンの運転手をやっているということでした。

別れ際に、「Family Portrait」というタイトルの自分の新しいCDを「これ、やるよ」と言ってプレゼントしてくれました。まあ、そのぶんくらいはチップをはずみましたけど。そのCDから1曲かけます。彼のオリジナルで、タイトルは「De-Twah」。「De-Twah」というのはデトロイトの俗称です。なかなか切れの良いかっこいいギターです。