パンクロックに日本的文脈を注入したTHE MODSのデビュー作『FIGHT OR FLIGHT』

引用元:OKMusic
パンクロックに日本的文脈を注入したTHE MODSのデビュー作『FIGHT OR FLIGHT』

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回はTHE MODSのデビューアルバム『FIGHT OR FLIGHT』紹介したい。この『FIGHT OR FLIGHT』の原稿を作成するにあたってTHE MODSのディスコグラフィーを調べていて驚いた。『FIGHT OR FLIGHT』がリリースされた1981年以降、彼らはほぼ毎年オリジナルアルバムを発表し続けているのだ。1994年、1997年、2002年など数年発売していない年もあるが、その年には映像作品やライヴ盤を出すなど、デビュー以来、何も動きがなかった年がないというのは驚異的ですらある。『FIGHT OR FLIGHT』に引っ掻ければ、間違いなく“FIGHT”し続けてきたバンドと言える。改めて言うことでもないが、すごいバンドだ。
※本稿は2015年に掲載

早くからパンクのアテチュードを貫く

1970年後半にセックス・ピストルズやザ・クラッシュ等がけん引するかたちで世界的なムーブメントを巻き起こしたパンクロック。当初このジャンルが内包していたエキセントリックなメッセージ性は徐々に薄まっていったものの、その反権力、反権威の姿勢は損なわれることなく、メロディックハードコア、エモーショナルハードコアに至るまで今もなお進化、深化し続けるR&Rである。日本ではアナーキーやザ・スターリン、ラフィン・ノーズらが、いち早く海外のパンクロックの洗礼を受けたバンドの代表格であるが、ピストルズよりも早く活動していた村八分は、ピストルズを聴いたギタリストのCharに「これ、村八分と一緒じゃん」と言われたというエピソードがあったり、1970年初頭からラディカルなメッセージ性を露呈していた頭脳警察もパンクロックに分類されるかも…という声があったりするので、その始祖を位置付けるのはなかなか難しかったりするが、THE MODSも間違いなくそのひとつで、早くからパンクのアテチュードを貫いてきたバンドである。

THE MODSの結成は1974年。当初は“THE MOZZ”と名乗っており、所謂“めんたいロック”と呼ばれるバンド群のひとつであった。“めんたいロック”とは当時、福岡を拠点に活動していたサンハウス、シーナ&ロケッツ、ザ・ルースターズ、アレキサンダー・ラグタイム・バンド(ARBに改名)らの総称で、その頃から福岡のミュージックシーンのレベルが高かったことをうかがわせる呼称である。THE MODSの結成が1974年ということは、結成後に海外パンクの影響を受けたことになる。1976年にメンバーチェンジもあって“THE MODS”に改名。1981年にメジャーデビューを果たすが、改名から5年を費やしている。サンハウスがアルバム『有頂天』でデビューしたのが1975年。シーナ&ロケッツはシングル「涙のハイウェイ」で、アレキサンダー・ラグタイム・バンドはシングル「野良犬」で、ともに1978年にデビューしている。ザ・ルースターズにしても1980年にシングル「ロージー/恋をしようよ」でデビューしており、つまり、THE MODSは他の“めんたいロック”勢の後塵を拝した格好であった。