女性“イカ画家”が感じる魅力とこだわり「艶めかしさといかがわしさが共存」

引用元:オリコン

 アオリイカの美しさに魅了されて以来、イカそのものを画材にもしながらイカの美を追求してきた“イカ画家”の宮内裕賀氏。そんな彼女の作品「イカトカイ」は、東京ミッドタウンで開催されたアートコンペティション『TOKYO MIDTOWN AWARD 2019』で準グランプリを獲得するなど、世間の高い評価を受けている。ひたすらイカだけを描き続けている宮内氏に、イカの魅力やそのこだわりを聞いた。

【画像】砕いたイカの水晶体を全体にちりばめたイカ絵

■地球外生物のような美しさにひと目惚れ

――イカを題材に描こうと思ったきっかけを教えてください。
宮内裕賀 2004年ごろに実家の鹿児島県大隅半島に帰ったとき、近所のおじさんが持ってきてくれた、釣りたてのアオリイカを見たのがきっかけです。それまでイカは食材としてしか認識していなかったのですが、そのときのアオリイカがあまりにも美しくて……。目が大きくて、色素胞の動きで体色がチカチカ明滅するように見えて不思議でした。地球外生物のような感じがしました。しかも、お刺身で食べたらとても美味しいんです。

――そこから絵の題材にしようと?
宮内裕賀 ちょうどその時期にウェブデザイナーの勉強をしていたのですが、油絵を公募に出す課題でモチーフを探していて、描いてみようと思い立ちました。油絵でイカの作品をつくると、それまでにないしっくりくる感じがあり、それからイカばかりを題材にするようになりました。でも、描いていくうちに、多くの人が「なんでイカを描くの?」と聞いてくるんです。犬や猫を描いても、そうは聞かれないですよね。私がイカに対して感じている魅力が、ほかの人にはわからないんだと実感して、その差を埋めたいという気持ちも強かったです。

――イカと出会ったことで、絵の描き方は変わっていった?
宮内裕賀 出会う前は基本的には油絵をやっていたのですが、イカを描くようになってからは、イカ墨を画材に取り入れています。墨を使うと水墨画になるので、自然と日本画への興味も沸いてきました。

――画材としてイカ墨を使うようになったきっかけは?
宮内裕賀 イカを解剖して、臓器などを観察することで、イカがどのように生きてきたかを調べていたんです。そのとき、誤ってイカ墨の袋を破ってしまったら、黒い墨が出てきて……。真っ黒になってしまったのですが、すごく力強さを感じて、イカ墨を使ってイカの絵を描けないかと考えました。ただ、真っ黒ではないんです。だんだん褐色に変化して、セピア色みたいになります。レオナルド・ダ・ヴィンチのイタリアのルネサンス期は、普通にインクとしてイカ墨が使われていたそうです。セピアという言葉は、イカ墨という意味ですからね。