『スター・ウォーズ』カイロ・レン“金継ぎ”マスクは何を意味しているのか?

引用元:オリコン

 映画「スター・ウォーズ」シリーズ最新作映画、そしてスカイウォーカー・サーガ最後となる『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』が、12⽉20⽇に公開される。

【動画】カイロ・レン マスクの秘密を深読み

 今年4月、米シカゴで開催された「スター・ウォーズ」ファンの祭典『スター・ウォーズ・セレブレーション・シカゴ2019』で、本作のタイトルとともに初披露された映像(特報)で、カイロ・レン(アダム・ドライバー)が自らぶっ壊したマスクを修理している様子が映し出された。本作で銀河の圧倒的支配者となったカイロ・レンがつける赤い亀裂の入ったマスクは何を意味しているのか。

 赤い亀裂の入ったマスクを見て、ピンと来たのは、日本で古くから行われてきた「金継ぎ」だ。江戸時代以前から漆(うるし)という木の樹液を使って壊れた器を修理する「漆継ぎ」、継ぎ目に金を蒔く「金継ぎ」という技法があった。さらに江戸時代後期にはガラスの粉末を焼いて割れものを接合させる「焼継ぎ」が誕生し、「継物師」や「焼継師」と呼ばれる職人が行商をしながら、壊れた器を補修していた。

 金継ぎについて調べていく中、都内で“金継ぎ”のマスターを見つけた。陶芸家(セラミックアーティスト)の中野拓さん。カイロ・レンのマスク(おもちゃ)持参で、表参道駅近くにある「彩泥窯」を訪ねた。ここでは誰でも陶芸が楽しめる教室も行っている。

 ストレートにマスクを見せて、「これ、どう思いますか?」と聞いた。

【中野さん】赤い線の感じがいかにも割れた跡という感じで、破損している部分を埋めてあって、まさに金継ぎしているな、という印象ですね。金継ぎで間違いないと思います。金粉を蒔く前、漆でつないだ状態はまさに赤いですからね。

 マスターが「金継ぎ」とキッパリ断言。続けて、「何か意味があると思いますか?」と聞くと、興味深い見解を示してくれた。

【中野さん】臥薪嘗胆(がしんしょうたん)というか、見返してやろう、負けたことを忘れずにさらに強くなってやろう、という気持ちが現れているんじゃないかと思いますね。

※臥薪嘗胆:「嘗胆」には「屈辱を忘れないようにする」という意味があり、復讐や成功させるため、目的を達成するために苦心・苦労に耐えること。

 実は、中野さん、前作『最後のジェダイ』(2017年)を観てないないという。カイロ・レンが自分でマスクを壊した経緯も、『スカイウォーカーの夜明け』で銀河の圧倒的支配者になっていることも知らない状態。(おもちゃの)マスクを見ただけで「金継ぎ」と通じるものを感じるという。

【中野さん】誰でも挫折とか苦難とか失敗とか、経験しますよね。競争して負けたり、うまくいかなかったり、そうなった時に、『見返してやろう』と奮い立つ。割れたり欠けたりしたからといって捨ててしまうのではなく、そこをあえて金粉を蒔いて、美しく加飾することで、元通り使えたり、付加価値が生まれたりするのが「金継ぎ」。より強く美しくなってやろうみたいな気持ちがあるんですよね。マスクという一番目につくところにわざわざ金継ぎを入れるというのは、見返してやる、とか、自分のやってきた歴史をそのまま大切にしながらより強くなっていこう、そういう意志が感じられますね。