King Gnu・井口理は激動すぎる1年間になぜあそこまでラジオにも全力だったのか?

引用元:rockinon.com
King Gnu・井口理は激動すぎる1年間になぜあそこまでラジオにも全力だったのか?

「さとるは理由の理でさとると読みます。」
King Gnuの井口理(Vo・Key)は2019年4月にレギュラー放送が始まった自身のラジオ『King Gnu井口理のオールナイトニッポン0(ZERO)』の冒頭で、毎回律儀にそう言っていた。確かに、バンド名を知ること、メンバー全員の名字を知ること、メンバー全員のフルネームを知ることは、自分が今どれだけそのバンドに夢中かのレベルを表しているようにも思える。そういう意味ではKing Gnu全員のフルネームを漢字で書けるようになった人の中には、井口のラジオを1年間聴いてどんどん沼にハマってしまった、という人が多いのではないだろうか。

FMでレギュラー番組は持っていたものの、AMの、しかも生放送の深夜ラジオというのは、人前でトークをすることが決して得意ではなさそうな井口にとってかなりのチャレンジだった。AMの深夜ラジオとはお笑い芸人がこぞって持ちたがる枠で、今や売れている著名人が熱望してもひと枠も空きが出ないパンパン状態。世界の情勢や生活便利情報、カルチャーというよりは、単純な面白さやその人らしいユニークさが求められる世界で、井口は1年間戦っていた。だが決して彼は一人で戦っていたのではない。彼の直前の枠で『オールナイトニッポン』の一部を担当しているナインティナイン・岡村隆史が番組冒頭に頻繁に乱入し「ぬーさん」、「おかむー」と呼び合いながら回を重ねるごとに仲良くなっていく様や、綾野剛、aiko、岡野昭仁(ポルノグラフィティ)といった大物すぎるゲストと一緒にカラオケをして「神回」と称された数々の放送、『Mステ』から『紅白』まで階段芸をやるやらないの一連の流れの中で井口をイジり倒していたリスナー、そして何と言っても、時に全員でスタジオライブを披露し、時に体調不良の井口のピンチヒッターを務め、最終回では一人ずつ粋なメールを送ったKing Gnuのメンバーたちに象徴されるように、人に愛され、助けられる形で、このラジオは存在していた。さらにそれは、まずは井口自身が相手に対して愛を持って、愛を与えていたからに違いないと、先週放送された最終回を聴きながら1年間を振り返り、心底感じたのであった。

井口は2020年3月で終了すると発表した放送の中で、実は『オールナイトニッポン』側からは継続の意向を示されていたと口にした。それでも終了すると決意した理由として、1年間自分をすり減らしてきたこと、自分の活動をもう一度見直したい時期になっていること、「面白くしなきゃ」とプレッシャーを感じる中で発した言葉が誰かを傷つけていないかと気になりしんどくなったことなどを挙げていた。もちろんそれだけではないだろうし、続けたいという気持ちも確実にあったと思うが、「楽しい反面、葛藤があった」と真っすぐに話す彼の純粋さと愛に、こちらも胸が熱くなったことを覚えている。

井口のラジオには中毒性があった。それは、King Gnuというロックバンドがこの時代に飛躍的なブレイクを成し遂げる1年間の過程を、「リスナー」という形で一番近くで目の当たりにしている気がしてたからだ。昨日より今日、今日より明日とKing Gnuを知る人が増え、人気が高まっていく状況で、彼のラジオを毎週聴かずにはいられなかった。初回放送で極度の緊張のあまり汗をかきまくっていたこと、「俺にラジオをやらせてるのは誰だ」と冗談交じりに「やらされてる感」を時たま吐いていたこと、新曲が出る度に一番早く聴かせてくれたこと、スタッフと築き上げた様々な企画やコーナー、ベースの新井和輝との共同生活、メンバーとの深い絆などなど……ヒヤヒヤしたり爆笑したり胸が熱くなったり、King Gnuも忙しかっただろうけど、1年間で伝説化したと言っても過言ではないこのラジオのリスナーだって、同じく大忙しだったのだ。心にぽっかり穴が開いてしまったリスナーの皆さん、「自分はこの伝説ラジオのリスナーだった」と胸を張り、いつか絶対に復活することを願って、今年度はもう少し気ままに彼らを応援しようではないか。(金秀奈) rockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)