カズレーザーの『ガンダム』しくじり授業を復習

引用元:オリコン
カズレーザーの『ガンダム』しくじり授業を復習

 テレビ朝日系で27日に放送された『しくじり先生』特別編では、カズレーザーが“先生”として教壇に立ち、国民的人気アニメ『機動戦士ガンダム』に隠された4つのしくじりを独自の視点から徹底分析。実際のアニメ映像を教材に、しくじりを招いた数々のシーンを検証した授業を振り返る。なお、インターネットの『Abemaビデオ』では、カズレーザー先生の授業完全版を配信中。今回の授業完全版は地上波終了直後から1週間、無料配信されている。

【画像】映画『閃光のハサウェイ』ビジュアル

 『機動戦士ガンダム』は1979年に放送開始され、昨年40周年を迎えた国民的アニメ。シリーズ作品も多く制作され、プラモデルも大人気だが、実は放送当初は人気がふるわず、全52話予定だったのに9話も短縮され43話に…。作品が評価されたのはアニメ放送終了後のこと。再放送を重ねるうちに人気が上昇し、劇場版制作へとつながっていった。

 なぜ最初の放送時に人気がイマイチだったのか。カズレーザー先生はその理由を、「子どもたちが期待していたような爽快感あふれるロボットアニメではなく、ストーリーが“激ムズ”だったから」と指摘。先生は、「ガンダムのストーリーを理解している人は日本に4人ぐらいしかいません!」と断言。「ファンの中でも論争が起きるぐらい」ストーリーも難しい上に、登場人物も多く、当時の子どもたちをポカンとさせてしまったのだと説明した。

■1つ目のしくじり…主人公アムロが愛せない

 授業では、カズレーザー先生が、当初不人気だった“4つのしくじり”をひとつずつ解説。1つ目は、「主人公を愛せない」こと。アムロは従来のロボットアニメの明るい主人公と違って超ネガティブ。回を追うごとに性格が歪み、陰で上司の悪口を言いまくるように…。また、天狗になったアムロは上司に逆ギレして殴られ、「親父にもぶたれたことないのに!」の名ぜりふを吐く。さらに、アムロは上司が自分の行動を非難するのを盗み聞きし、ガンダムに乗って失踪するという仰天行動を取ったことも。青臭く、自分勝手な言動の多いアムロは子どもたちの支持を得られなかった。
 
■2つ目のしくじり…必殺技がない

 それまでのロボットアニメでは主人公が必殺技の名を叫んで攻撃するのがお約束だったが、アムロの叫び声といえば「うわああ~!!」などリアルで地味なものばかり。先生は、そのリアルな描写の背景にはスタッフの強い志があったことを紹介。作品のテーマは、“人間はなぜ戦争をするのか”。スタッフは「戦争を語るならリアリズムがなければ」という高尚な思いを持って制作していたのだ。そしてリアルを追求した結果、敵軍のキャラ、ランバ・ラルが壮絶な最期を遂げる、という複雑な内容の回も生み出された。 

■3つ目のしくじり…ガンダムが全く活躍しない回が結構ある

 ファンが“神回”と崇めるのが、第15話「ククルス・ドアンの島」。これは、ジオン軍の脱走兵ドアンが、戦争に加担した罪悪感から島で戦争孤児を育てる、という重い話。当時の子どもたちは「この回、何が言いたいの?」と困惑するばかりだったが、今では“学びの多い回”として高い評価を得ている。ほかにもガンダムが活躍しない印象的な回として、先生は“行方不明の父とアムロが再会する”場面などを紹介。先生は「この作品が描きたかったのは“人間”。ガンダムが登場しない回こそ、ガンダムっぽい」と分析した。 

■4つ目のしくじり…シャアの魅力が伝わらない

 最後にあげたのは、アムロの宿敵、シャア・アズナブルのしくじり。シャアは今でこそ女性人気の高い看板キャラだが、放送当初はその魅力が伝わらない存在だった。シャアが第1話で残したのが「認めたくないものだな…自分自身の若さゆえの過ちというものを…」という捨てぜりふ。喜怒哀楽すら伝わらない、このせりふに子どもたちは混乱。しかも、シャアは窓際部署に左遷され、第13~25話までの間、ほとんど登場しないというひどい扱いを受けていたことも『ガンダム』の特異な点の一つとした。

■『ガンダム』には、人類の愚かさと希望を伝えるメッセージが込められている

 授業の最後、カズレーザー先生は、『機動戦士ガンダム』が40年経った今でも愛されているのは、この4つのしくじりがあったからだと力説。そこから、「既存の成功例を追わないことが圧倒的な作品を生む唯一の道である」という教訓が見い出せると話した。

 さらに、リアルにこだわる『機動戦士ガンダム』にも1点だけリアルではないところがあると語った。それは「最後に戦争が終わる」こと。現実世界では常にどこかで戦争が起きているが、『ガンダム』シリーズは必ず、戦争が終結して幕を閉じる。「ガンダムは、“戦争が終わるまで”を描いた作品。そこには“人間は愚かで戦争を繰り返す”という面と、“人間は捨てたものじゃない、という魂の不屈を讃えるメッセージ”が込められている」と、力強い言葉で名作を称賛し授業を締めくくくった。