<レポート>無尽蔵のエネルギーとブレない作品愛 FLOW【アニメ縛りリターンズ】公演を振り返る

引用元:Billboard JAPAN
<レポート>無尽蔵のエネルギーとブレない作品愛 FLOW【アニメ縛りリターンズ】公演を振り返る

 FLOWが“アニメ関連曲”だけで臨んだ単独公演【FLOW超会議2020 ~アニメ縛りリターンズ~】は、間違いなくこのバンドの真髄そのものだった。まずアニメ関連のタイアップ曲限定で単独公演フルセットをやり切ること自体が並みではないし、さらに彼らの場合、そのほとんどが疾走感や爆発力が求められる“オープニング・テーマ”であるだけに、“アニメ縛り”ともなれば自ずとカロリー消費の高い内容となってくる。それでも2時間超のセットを用意し、最後までフルスロットルで駆け抜けることができたのは、彼らが20年選手のタフなロック・バンドであるがゆえだし、終始そのハイエナジーに応え続けたオーディエンスの熱量もまた、本公演の完走に欠かせない燃料だった。

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 コンセプト・ライブならではのスペシャルな演出も盛りだくさんだったこの日、開演前の影アナを務めたのは声優、内田真礼。FLOWのメンバーは楽曲提供&レコーディング参加した縁がある仲だが、FLOWファンはもちろんのこと、熱心なアニメ・ファンも多く集ったであろう会場で、今をときめく大人気声優による前説が大きな盛り上がりを見せたことは言うまでもない。

 そして開演直後、ステージが暗転し、スクリーンに流れかけたオープニング・ムービーを遮るように姿を映し出したのは、アニメ『コードギアス 復活のルルーシュ』に登場する“仮面の男”ことゼロだ。この日、セットリストは基本的にタイアップ作品ごとに楽曲がまとめられていたのだが、その幕間では作品に登場するキャラクターたちによる煽りコメントが流れ、ステージに華を添えた。そんな豪華な開幕宣言に続き、ショーは『コードギアス 復活のルルーシュ』オープニング・テーマ「COLORS」でスタート。さらに同シリーズから「WORLD END」「PENDULUM」と立て続けに披露されれば、オーディエンスのテンションも急上昇。早くも熱気に包まれた客席に向かって、KOHSHIとKEIGOのツイン・ヴォーカルは伸びやかでメロディアスな歌声を響かせていく。

 さながらアニメの導入シーンを思わせるような竜ヶ峰帝人(『デュラララ!!』)の語りから始まったのは、『デュラララ!!×2 結』オープニング・テーマの「Steppin’out」。toku(GARNiDELiA)のアレンジによる楽曲であり、エレクトロからソカや三拍子のワルツまで目まぐるしく展開していく構成は、バンドの実験的な姿勢の表れであると同時に、先の読めない『デュラララ!!』の世界観を反映したものでもある。そこからシームレスになだれ込んだ「WORD OF THE VOICE」は一転、パンクやメタルをルーツに持つ彼らの原点回帰的な、重厚で直情的なサウンドが『ペルソナ ~トリニティ・ソウル~』のどこか退廃的なムードを思い出させ、続く「Hey!!!」も『べるぜバブ』のオープニング・テーマらしい、コミカルで力強いロック・ナンバーに仕上がっている。この「Steppin’out」~「Hey!!!」までのセクションは、FLOWというバンドが毎回タイアップ作品と真摯に向き合い、大きなリスペクトを持って楽曲提供に臨んできたことを証明する3連打だったし、実際的にそれを可能にする彼らの音楽性のバラエティを明らかにしていく流れでもあった。

 2018年の“アニメ縛り”ツアーに続き、今回も“天の声”的な形で出演した羽佐間正義(『サムライフラメンコ』)が先導した「サムラーイ……フラメンコ!!」のコール&レスポンスを受け、披露されたのはFLOW屈指の疾走感を誇るキラー・チューン「愛愛愛に撃たれてバイバイバイ」だ。この曲ではすっかりお馴染み、RAB(リアルアキバボーイズ)とGinyu forcEのブレイクダンス&サイリウムダンスも飛び出し、ここにきてライブのギアをさらに1段階上げたあとは、映画『ドラゴンボールZ 神と神』から「CHA-LA HEAD-CHA-LA」「HERO~希望の歌~」、さらに楽器隊のインスト・セクションを挟んでアニメ『HEROMAN』から「INVASION」「CALLING」と矢継ぎ早に展開、底抜けのバイタリティがここぞとばかりに発揮される。

 「レントン、一緒に行こう? だって、君じゃないとダメみたいなの」とエウレカ。『エウレカセブン』のセクションが始まることを瞬時に察知した客席から大歓声があがるなか、1曲目「DAYS」が始まる。『エウレカセブン』といえば『コードギアス』や『NARUTO』と並び、FLOWの歩みを語るうえでは欠かせない作品であるだけに、全曲ピーク・ポイントなこの日のセットの中にあって、熱に浮かされたオーディエンスの意識を再び引き締める一手としては最適な配置ではないか。特に亀田誠治がプロデューサーとして迎えられた「DAYS」などは、バンドの作風を大胆にモダナイズした、今の彼らのハイブリッドな音楽性にも繋がる分水嶺的な楽曲なので、このキャリア総括的なライブにおける折り返し地点を飾るに相応しい1曲といえる。

 こうして始まった後半戦、次のセクションはゲーム『テイルズ オブ ベルセリア』主題歌の「BURN」からスタート。FLOWと『テイルズ』シリーズの歴史は比較的浅く、2016年にリリースされたこの「BURN」が初タッグだ。メタリックなギターリフとストリングスが絡み合う「BURN」や「INNOSENSE」にしろ、バグパイプを取り入れた、エキゾチックな趣の「風ノ唄」にしろ、この頃のバンドは言わば成熟期にいて、様々な音楽性を取り入れながらも研ぎ澄ましたアンサンブル、ダイナミズムに富んだサウンドを鳴らすようになったわけだが、まさしくそれらは壮大なファンタジー物語を描く『テイルズ』作品の世界観との親和性も高く、今もなおアップデートされていく彼らのミクスチャー感覚が、アニメ作品とのコラボレーションによる相乗効果でこそ生まれているのだと強く感じさせる一幕でもあった。

 そして迎えた最後のセクション、フィーチャーされるのはもちろん『NARUTO』シリーズだ。舞台『ライブ・スペクタクル「NARUTO -ナルト-」』公演イメージ・ソングの「光追いかけて」を皮切りに、アニメやゲームのテーマ・ソングが次々と投下されるが、FLOWと『NARUTO』の歩みが10年以上にわたるだけあって、積み重ねられていくエモーションも倍々ゲームのように膨らんでいくし、その熱がしっかり客席にまで波及していく様も感動的だった。「今日歌わせてもらった全ての楽曲、全ての作品、そして目の前にいるみんながオレたちの誇りです!」とKEIGO。作品愛とオーディエンスへの感謝を最大限に示し続けた彼らのパフォーマンスは、最後の1曲「Sign」まで決してブレることはなかった。

 この【FLOW 超会議 2020 ~アニメ縛りリターンズ~】の模様は、3月29日22時からWOWOWにて放送予定。伝説の一夜の目撃者になれるチャンスはまだ残っている。

◎公演情報
2020年2月24日(月・祝)
千葉・幕張メッセイベントホール
<セットリスト>
01. COLORS
02. WORLD END
03. PENDULUM
04. Steppin’out
05. WORD OF THE VOICE
06. Hey!!!
07. 愛愛愛に撃たれてバイバイバイ
08. CHA-LA HEAD-CHA-LA
09. HERO~希望の歌~
10. INVASION
11. CALLING
12. DAYS
13. Realize
14. ブレイブルー
15. BURN
16. 風ノ唄
17. INNOSENSE
18. 光追いかけて
19. Re:member
20. Break it down
21. SUMMER FREAK
22. 虹の空
23. GO!!!
24. Sign