『全裸監督』は「99%負け戦、玉砕覚悟」…山田孝之がそれでも“逃げなかった”理由

引用元:オリコン
『全裸監督』は「99%負け戦、玉砕覚悟」…山田孝之がそれでも“逃げなかった”理由

 爽やかな好青年からコワモテ闇金社長、おバカな勇者まで、変幻自在にキャラクターを演じてきた山田孝之。そんな彼が、最新映画『ステップ』(4月3日公開)で初のシングルファザー役に挑んだ。実生活でも“父親”であるがゆえに、演じる上では思うことも多かったようだ。今や30代も半ばに差し掛かり、俳優としては充実一途。昨年はNetflixドラマシリーズ『全裸監督』の怪演でも絶賛を浴びたが、実は「玉砕覚悟」で臨んだものだと言う。山田が見据える世界、そして未来とは?

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■実生活でも父親、演じて感じた育児の葛藤と「妻への感謝」

 重松清の人気小説を映画化した『ステップ』。山田は、30歳の若さで妻に先立たれ、生まれたばかりの愛娘・美紀と共に、不器用ながらも一歩ずつ進んでいくシングルファザー・健一を演じる。山田は、「妻を失うということがどういうことなのか、娘を育てるというのがどんな感覚なのか。それを経験してみたかった」とオファーを受けた理由をシンプルに述べる。

 ただ、撮影中はとにかくつらかったと山田は言う。

 「妻を失ってしまったつらさはもちろんなのですが、それに付随して、様々な感情が湧いてくる。自分がいっぱいいっぱいになっているのに、子どもがぐずってしまう。そのときは『なんでここにいてくれないんだよ』という気持ちが出てきてしまうけれど、冷静に考えると『子どもの成長を一番見たかったのは妻なんだ。向こうの方が辛かったはずだ』と思い、踏ん張らなければいけない。その葛藤に苦しむこともあったし、負の感情を持ってしまったことへの自己嫌悪もあります」。
 
 苦しいながらも、小さい娘と共に健一という人物の10年間を演じたことで、改めて子育ての難しさを実感した。「実生活で、育児について『なんでわからないの!』と言われて、『俺だって子育て初めてだし』なんて言っていたのを思い出しました。あとは、やっぱり…妻への感謝は確実に感じました」とはにかんだ。

 物語の中の人物を嘘なく視聴者に届ける――。どんな特異な役柄だとしても、それができるのが山田だ。本作で演じたシングルファザー役にも、圧倒的な説得力が感じられた。奮闘する健一を登場人物はみな温かく見守るが、描かれるのは表面的な“きれいごと”ばかりではない。そこには山田なりのこだわりがあった。

 「唯一見せ方として意識したところです。みんなに優しくされている健一ですが、“頑張っているパパ”という面だけを見せるのは違うと思いました。そんなきれいごとじゃない感情をしっかり出すことが、健一には必要。小学校の先生と対峙して、マイナスな感情を顔に出してしまうシーンは、かなり人間臭い部分が出ていると思います」。