『あつまれ どうぶつの森』で「車椅子」に救われたファンが多数現れる。多様性を重んじたゲーム開発が車椅子生活者の心打つ

『あつまれ どうぶつの森』で「車椅子」に救われたファンが多数現れる。多様性を重んじたゲーム開発が車椅子生活者の心打つ

 海外メディアKotakuの記者マイク・フェヒー氏によるコラム「『あつまれ どうぶつの森』に車いすがあってとても幸福だ」が話題となっている。氏は2年前、死に至る可能性を含む病気である大動脈解離を患い、胸から下が麻痺したため車いすを利用して生活している。

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 多くのビデオゲームは空想を実現するが、誰の空想にも「銃を持てない」、「車を運転できない」、「器具の補助無しに歩けない」といった項目は存在していないとフェヒー氏は語る。しかし、『あつまれ どうぶつの森』で車いすが登場したことで、「私は仲間に入れてもらえている」と感じたという。

 もちろん氏はゲーム内を走り回り、釣りや虫取りなどさまざまなアクティビティを楽しんでいる。これらは車いすでは難しいことだ。その内のひとつに「車いすに乗る」という行為が含まれていることは、自分の存在が認められているようでうれしいとしている。

 同様の意見は海外掲示板Redditでもいくつか出ている。病気で車いすを使わなければならない時があるというprincessp0tat0氏は、友人から送られてきた車いすのスクリーンショットをみて、「『どうぶつの森』ありがとう!」というスレッドを立てた。

 また、別のユーザーであるCorverne氏は、車いすをアレンジできることを喜ぶスレッドを立てている。「車いす仲間!」とほかの車いす利用者に向けて書き込んでいることから、Corverne氏も車いすを利用しているようだ。

 アメリカの日刊紙ワシントン・ポストは、『あつまれ どうぶつの森』のディレクターを務めた京極あや氏とプロデューサーを担当した野上恒氏へ、ゲームの性別表現などに関するインタビューを行っている。

 『あつまれ どうぶつの森』は服やアイテムの性別制限を撤廃し、自己表現の選択肢を増やしている。京極氏は「性別だけでなく、社会は多くの人の持つ多様なアイデンティティーを大切にする時代になってきている」という開発チームの姿勢を語っている。

 ゲームの車いすは家具であり、現実のように乗って移動ができるわけではない。それでも車いすに乗る人のいる事実をゲームが意識していることは、車いすを利用するライフスタイルを享受している人たちにとって、救いとなっているようだ。『あつまれ どうぶつの森』の多様性を大切にする思いは、より多くの人が喜ぶ瞬間を作り出すということに繫がっているのだろう。

ライター/古嶋誉幸 電ファミニコゲーマー:古嶋 誉幸