つかみどころがない独特の世界観!インディーズ界の巨匠ハル・ハートリーが、いままたアツい!

引用元:Movie Walker

90年代初頭に高い評価を集めNYインディーズ映画界の名匠として独自の地位を確立してきたハル・ハートリー監督。今年は長編デビュー30周年となり、日本ではキャリア初期の中短編全6作を楽しむことができる特集上映「ハル・ハートリー DAYS OF 16mm FILMS サバイビング・デザイアー+初期短編特集」が現在実施されている。

【写真を見る】実験的な題材も!ハル・ハートリー作品の特徴とは?(『アンビション』)

ハートリー監督は、90年代のNYインディーズシーンの波に乗ると『トラスト・ミー』(90)でサンダンス映画祭脚本賞を受賞。続く『シンプルメン』(92)ではカンヌ国際映画祭に正式出品されるなど高い評価を受け、日本でもミニシアター文化の隆盛と共に注目を集めてきた存在だ。

突如繰り広げられるダンスや現実味のない台詞回しなどどこかシュールでつかみどころがなく、メジャー作品とは一線を画したインディペンデントだからこその独自の世界観を築き上げるハートリー監督。『ヘンリー・フール』(97)ではカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞するなど、その後もキャリアを通しコンスタントに作品を生み出してきたが、日本ではミニシアター文化の勢いが衰えると共に作品がなかなか公開されなくなってしまった。そのため、彼の名を聞くとどこか懐かしいと思う人も少なくないかもしれない。そんな彼だが、近年はクラウドファンディングを活用しての過去作の復刻やソフト化などインディペントの映像作家の可能性を見出し、日本でもその活躍が盛り上がりを見せているのだ。

そして今回の特集ではキャリア初期の中短編作品がラインナップされている。偏屈な大学教師と魅惑的な女子大生の恋の駆け引きが繰り広げられる『サバイビング・デザイアー』(91)をはじめ、ブルックリンに住み着いたアーティスト志望の若者の1日をつづる『セオリー・オブ・アチーヴメント』(91)、成功を渇望する男の妄想を、古典的なアメリカンドリームへの皮肉的に描いた『アンビション』(91)、とある手違いから起こる男女のから騒ぎをオペラ形式で見せる『オペラNo.1』(94)。

加えて、元恋人を追おうとするも次々と邪魔が入ってしまう青年の様子を活写した『キッド』(84)に、運命の恋に翻弄される不器用な男の右往左往を描く『地図職人の恋人』(87)と、若きハートリーがデビュー前に制作した作品も日本初公開。恋物語から実験的な作風のものまでバリエーション豊かな内容となっている。

またこの度、新作『ホエア・トゥ・ランド(原題)』の実現に向け、クラウドファンディングサイト“キックスターター”にて、募集額30万USドル(約3300万円)のクラウドファンディングを実施中。映画はどこかハートリー本人を思わせる映画監督ジョー・フルトンを主人公にした自伝的要素を含んだコメディ。58歳のジョーが人生の転機を感じ、近所の墓地で働こうとすると、思い込みの激しい恋人が彼の余命がわずかだと勘違いし、アパートにお別れを言う人が押し寄せてくるという物語だ。

60歳を迎えますます精力的に活動、新作プロジェクトにも期待がふくらむハートリー監督。ぜひ彼の貴重な作品たちをスクリーンで味わい、その魅力を再発見してみてほしい。(Movie Walker・文/トライワークス )