つんく♂が語る“サブスク全盛時代”の音楽のあり方 近大新入生にメッセージ「聞いた言葉から何を学ぶか」

引用元:オリコン
つんく♂が語る“サブスク全盛時代”の音楽のあり方 近大新入生にメッセージ「聞いた言葉から何を学ぶか」

 アーティスト、音楽プロデューサーとして時代を作ってきたつんく♂(51)。14日配信に続き、ORICON NEWSでは文字を打ち込む形式でインタビューを実施。後編では、新たな時代を迎えた音楽の聴き方などを聞いた。

【写真】パソコンに打ち込む形式でインタビューに応じるつんく♂

■ポジティブなスパイラル構築を呼びかけ “手抜き楽曲”に憂慮も

 2019年は流行語大賞に「サブスク元年」がノミネートされるなど、音楽の聴き方が変わり始めた年とも言える。“令和時代の音楽のあり方”について問われると、つんく♂は「キチンとした音楽スパイラルが出来上がれば良いなと思います。CDでも、サブスクでも、昔でいうとラジオでも有線でも、『ベストヒットUSA』でも良いんです。お茶の間はまず音楽を捉えなければならない。そして季節感や思い出と一緒に心に刻み込んでいただく。これはどんな形であれ音楽のあり方の根本ですよね」と説明した。

 続けて「だとして問題はそれをどう作っていくか、です。制作費があって、詞・曲ができて、バックトラックができ、それを今まではレコードやCDとして商品にしてきた。今後はYouTubeなのか、サブスクなのか、オンラインサロンでのみ公開なのか、もしくはさらなるなんらかの方法で音楽が届けられると思われます。無料だったり定額だったりといろんな提供する形があるとして、そこからどう回収するか、それが問題です」と指摘した。

 「安かれは悪かれ、これでは本来ダメなんです。でも、少々荒っぽいのはOKな昨今。それもそのはず、聞く側も『YouTubeでタダやし、そんなもんちゃう?』みたいなことになってるのも事実です。趣味で曲を作ってSNS等にアップして、『いいね』みたいな反応があって、『たくさんの方に聞いてもらえてよかった~』って話は単純にエエ話なんだけど、それだと最初に言った音楽環境の循環が成立してないわけです。それではダメ。そこをどうやっていくかが問題です。本来なら印税や原盤配当などのインカムがあり、それを元手に次の制作費や新人発掘に当てたり、作家に分配したりと市場が成り立つんですが、無料や定額になっていくとインカムが激減するから循環しなくなる」と収益の分配への不安点を語る。

 オリコンの年間ストリーミングランキングを見ると、バンドが上位に連なる。「例えば、バンドマン達なら自分たちで全国ツアーをやればいい。ライブの動員収入も、グッズ売り上げも総計算の収支で黒字ならばOKでしょう。という意味では、サブスクでもYouTubeでもいいから曲を知ってもらって『気に入ったらライブに来てね!』となる」と自身の経験も踏まえ解説。「でも、それはバンドだから成立する。もし、曲を作る人がメンバーにいなかったら、作家はどう回収をするのか。Tシャツの売り上げを分配してくれるの?って話になる。『10曲入りのアルバムうち3曲書いているから、10分の3ね』とか(笑)。そこら辺が見えてこない。作家側への分配スキームがないから、正のスパイラルが成り立っていないんだよね」と持論を展開した。

 さらに「自分が歌手のうちは『ライブで稼げばいいや』と思う。でも、僕みたいに歌えなくなった人間は死活問題。新曲を書くけど、CDが売れないと印税が入ってこない。サブスクで1億(回)再生して、なんぼ入ってくるのかというのが問題だよね。中古車も買えないんじゃないかな」と、つんく♂だからこそストレートに“物言い”をしていた。

 これからの音楽業界が、どうなるのか予測をしてもらうと「どうやって食っていくんだろうね」と短い言葉を紡ぐ。「作るのには、お金がいる。でも、0円みたいな額で曲を作るクリエイター達が出てきている。パソコンの中で、安いソフトを使って、レコーディングしたり、打ち込んだり、雰囲気を作れてしまう。ビリー・アイリッシュみたいに才能があったら突き抜けることもある。10曲連続で話題作を作れるかと言ったら、どうなのか。うちの子どもが10歳の頃友人達とテイラー・スウィフトの新譜を聞いて『昔の方がよかったよね』などと話していたのを覚えている。その動画を見ても「予算もかかっていてよく出来ているのになぁ」と僕らは制作側のフィルターで判断してしまうこともある。しかし、子どもらは鋭く、世の中にあるたくさんの情報から友達同士で良いものを共有しあう。この先、音楽業界は厳しい」と最前線にいるからこそ見えるビジョンを語っていた。