日本人も共感する視点で描かれた家族問題 20日公開「恐竜が教えてくれたこと」

引用元:夕刊フジ

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 2019年のベルリン国際映画祭などで数多くの賞を受賞した『恐竜が教えてくれたこと』(20日公開)は、思春期を迎えた少年の「ひと夏の思い出」という普遍的テーマをあつかったオランダ映画の秀作である。家族問題をリアルかつ人情味あふれる視点で描いているから、今の日本人に共感を呼ぶに違いない。

 オランダ北部にある小さな島に家族とバカンスに訪れている11歳の少年サムは、不思議な魅力をもつ少女と出会う。その女の子は看護師の母親と2人暮らしで、父親は亡くなって顔も知らないと話す。ところが、2人が知り合って間もなく、少女は死んだと思っていた父親をフェイスブックで偶然見つけ、島にひそかに招待したというのだ。

 思いがけない告白に少年は驚くが、結局彼女が考えた秘密の計画に協力することになってしまう。周りの大人たちが、そうとは知らず、2人の行動に振り回されていく展開がミステリアスで面白く見せる。

 「死」や「孤独」問題についてサムが思いをめぐらせるシーンが、物語の本筋と巧みに絡みながら、冒頭に書いたテーマに合流していく結末もうならせる。原作がアンナ・ウォルツの有名な児童文学『ぼくとテスの秘密の七日間』(フレーベル館刊)だからだろう、ドラマ構成が細部にわたるまで緻密に、がっちりできている。

 ハリウッドのアカデミー賞も、このような作品に賞をあげてほしい。そんなことをいうと、また「白人一色になる」といった声が聞こえてきそうだが、どこの国だろうが、どんな人種だろうが、いい映画はいいのである。ハリウッド映画界に限らず、映画祭の審査は映画の出来以外の事柄に忖度(そんたく)することなく、元々の趣旨に立ち返って賞を与えるべきだ。そんなことを考えさせるが、映画本来の楽しさに満ちた作品だから、気軽にご覧いただきたい。(瀬戸川宗太)