桂米団治「工夫して」コロナ渦で米朝さんに思いはせ

引用元:日刊スポーツ
桂米団治「工夫して」コロナ渦で米朝さんに思いはせ

人間国宝だった故桂米朝さん(享年89)が亡くなって5年になる19日、兵庫県姫路市の名古山霊苑で、神道の神事「五年祭」が行われた。

長男で落語家、父がおこした「米朝事務所」社長にも就く桂米団治(61)は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、中止、延期が相次ぐ現況への素直な思いを吐露した。

神事には米団治、筆頭弟子の桂ざこば(72)ら一門35人と、親族関係者ら約50人が出席。ざこばが代表して「師匠が亡くなって5年ですが、いつもそばにいてはるつもりなんで…。昨日も師匠に(頭の中で)怒られるようなこと言われたりしてます。まあ、頑張ります」とあいさつした。

神事を終えた後、2人が取材に応じ、米団治が「前代未聞の国難という感じですね」と、現況に言及した。今年は3月20日から、五年祭行事として「米朝まつり」を行う予定だったが、取りやめ。米朝事務所が主催、製作協力をする公演は3月だけで約40公演が取りやめになった。

米団治は、父の米朝さんなら…と思いをはせ「戦争を体験した米朝は『戦争中はもっとひどかったんやで。家も何も焼けてしもた。仕事がないくらい何やねん。また、工夫してやらんかい』と言っていると思います」。興行としての米朝まつりは中止となったが「もっと、みんな知恵出してやらなあかんで」と、励まされた気分だという。

米団治によると、4月公演分の中止も含めれば「50も超えるような数」と言い「早速、銀行に電話して」などという表現で、厳しい状況を口にした。ただ、もっと厳しいのは世間の空気とも感じる。

「東宝さん、宝塚歌劇がどう動くか。みな、やりたくて仕方がないんですけども。爆弾を落とされる戦争は仕方ないけれど、目に見えない相手と闘う恐ろしさをひしひしと感じます」

再開の時期は、政府方針を受けての判断になるものの「開いたはいいが、お客さんがこない-これも怖い。お客さんと一緒になって『やろう』という機運を作りたい」と力を込めた。

ざこばが手がける動楽亭も上演中止が続いており、ざこばはひとつの目安として「4月1日」をあげた。米団治も「ざこば兄さんに先頭に立ってもらって」と期待する。

一方で、米朝事務所としては、これまで積極的に関わりがなかったインターネットへの進出も決めた。事務所の公式YouTubeチャンネル「米朝事務所」を、20日からリニューアルオープンする。

所属はなし家によるトークや大喜利を配信予定で、落語こそないものの、米団治は「はなし家ってこんなおもろいでって、知っていただいて、来るべきときにさらに大きく羽ばたけたら」と考える。

公式チャンネルを「名付けて『べえちゃん』」と呼び「アクシデントをバネにして足元を固めていきたい」。中止になった米朝まつりについて、米団治は「この時期はちょっと自重して、また練り直して大きなまつりができたらなと思います」とも約束した。