スカート「自分と作品との距離を考えていた」CDデビュー10年を振り返る:インタビュー

引用元:MusicVoice
スカート「自分と作品との距離を考えていた」CDデビュー10年を振り返る:インタビュー

  澤部渡のソロプロジェクトであるスカートが3月18日、Double A Side Single『駆ける/標識の影・鉄塔の影』をリリース。CDデビュー10周年イヤーに突入したスカート。「駆ける」は『第96回箱根駅伝用オリジナルCM』年始特別バージョンテーマソングとして書き下ろされたナンバーで、2曲目の「標識の影・鉄塔の影」はテレビ東京ドラマ25『絶メシロード』のエンディング曲として作られた。インタビューでは「粛々としたドラマだった」と話すこの10年間を振り返ってもらい、今作の制作でこだわったところなど話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

自分と作品との距離をよく考えていた

――昨年のライブで澤部さんがやられているような音楽は「絶滅危惧種」だとお話していたのが印象的でした。

 世の中が僕らがやっているような音楽を必要としなくなって来ていると感じています。そういう意味で絶滅危惧種という言い方をしたんだと思います。それは街で流れている音楽とかを聴いていても感じてしまいますし、それは、ムードとか音楽に限らず、他のジャンルでもあると思っていて。

――その中で心に寄り添う、寄り添わないというお話もしていて、そこも大きく関係しているのかなと思いました。

 特に今は寄り添っている音楽の方が求められている気がします。

――澤部さんの音楽はもっと大きなところ、生活自体に寄り添っているような感覚があって、どこか洋楽的なニュアンスもあるんですが、邦楽と洋楽ではどちらの方が聴く頻度は多いですか。

 割と半々ぐらいで聴いている感じはあるんですけど、量で言ったら洋楽の方が多いかも知れないです。

――サウンド面では洋楽を参考にする事も?

 曲によって変わります。曲によってはカーネーションのようなドラムとか、この曲はエミット・ローズ(米・音楽家)のような感じが良いなとか。なので一概に洋楽からという感じでもないです。でも、必ずしもそれと同じ事をやりたいわけではなく、イメージだけなんですけど。

―― CDデビュー10周年イヤーに突入されましたが、この10年間を振り返るといかがでしたか。

 う~ん、そんなに大きなドラマはなくて、粛々としたドラマはありましたけど。

――とはいえターニングポイントはありますよね?

 それはあります。アルバムで言ったら『エス・オー・エス』と『CALL』は特に大事なアルバムで、状況を変えたのは『ストーリー』です。

――状況が変わったというのは?

 単純に売れたんです(笑)。

――それは重要ですね。プロモーションの仕方を変えたんですか。

 いえ、何にもしないで3000枚ぐらい売れたので驚きましたね。ミュージックビデオすらもYouTubeにあげていなかったので。

――確か『エス・オー・エス』は初回ロット500枚でしたよね。そこに100枚ほどレコード店からのオーダーが入っていて。

 そうなんです。その時は「スカートって誰だ?」という感じもあったので、100枚もお店からオーダーが入ったのは嬉しかったですよ。そこから500枚も割とすぐになくなりましたから。注文書を書いたり、商品の梱包まで何から何まで一人でやっていたので、その頃は自分と作品との距離みたいなものをよく考えていました。でも、『エス・オー・エス』と『ストーリー』は今でも自分で作って出荷してますけど(笑)。

――澤部さん家から発送されると。

 そうなんです。ジャケットも凝っていて、作業しやすいように長方形の紙を折りたたんで、そこにCDを入れているんです。それを自分でやると、業者に頼むより10円くらい安くなる。枚数が出るとそれもバカにならないので、経費もすごく考えてCDを作ってましたから。

――次のターニングポイントは?

 今の事務所であるカクバリズムに入ったことです。これも自分の中ではけっこう大きな出来事でした。『ひみつ』『サイダーの庭』とアルバムを作っていく中で、もう一人では出来ないなと思ったんです。曲を作っても自分の枠から出られない、それに悩んでいました。それでカクバリズムの角張さんに相談していたら「ウチからアナログ盤を出してみない?」と言ってくれて。それで『シリウス』をリリースして『CALL』に繋がったんです。

――そこで枠から飛び出す事が出来て?

 いえ、まだその時はきっかけを掴んだくらいですね。

――さて、メジャーデビューして3年目に突入しましたが、メジャーでの活動はイメージしていた通り?

 想像を超えていたところとイメージ通りだったところがあります。一番大きかったのはプロモーションだと思います。それがあると聴いている人の顔が見えて実感出来るのは、自分にとってすごく大きな事です。自宅で梱包していた時は「一体誰が聴いているんだ」と思いながらも作業していたわけで(笑)。地方にインストアイベントに行くと、ここにもこんなに僕の音楽を聴いてくれている人がいるんだとわかって、モチベーションに繋がりますから。