打首獄門同好会、ラウドだけどほっこり幸せになれる名曲5はこれだ!

引用元:rockinon.com
打首獄門同好会、ラウドだけどほっこり幸せになれる名曲5はこれだ!

「生活密着型ラウドロック」という独自の表現スタイルを確立している打首獄門同好会。彼らの様々な作品の中から、「聴いているとほっこりとした気持ちになる」という観点で5曲を選んだ。平凡な日々の中にある無数のきらめきが、各曲に鮮やかに刻まれている。じっくりと歌詞に向き合いつつ耳を傾けたり、秀逸なMVと併せて楽しんだりすれば、ほっこりできると同時に、大きな活力を得ることもできるはずだ。(田中大)

●まごパワー
医療行為、建築物の設計と工事監理、フグの調理、ひよこの性別の判定といった、きちんとした知識と資格の取得によって発揮することが許される能力、テレポーテーション、サイコキネシス、パイロキネシス、スプーン曲げといった超能力……などなど、世の中には様々な能力が存在するが、多くの人にとって最も身近なもののひとつにスポットを当てたのが、“まごパワー”だ。我が子を厳しく躾けて「スパルタ親父」、「教育ママ」と呼ばれていたかつての猛者も、孫が身に着けている特殊能力に完敗してしまうことがよくあるというのは、みなさんもよくご存知だろう。
「年寄りっ子は三文安い」という言葉がある通り、祖父母の甘やかしが孫を駄目にしてしまうことを昔から皆がよく知っているはずなのに、なぜ「目に入れても痛くない」とか目尻をデレデレと下げて言いながら、まごパワーに容易に屈してしまうのか? 深まるばかりの謎と、孫に振り回される悲哀について考えさせてくれるこの曲は、ほっこりできる一方で、なかなかホロ苦い。

●フローネル
「しあわせとは何なのか?」というのは、様々な賢者、哲学者、芸術家、思想家たちが向き合ってきたテーマであり、100人いれば100通りの答えの形があるのだろうが、おそらく大半の人が納得するはずの明快な答えを示しているのが、芦沢ムネトが生み出したキャラクター「フテネコ」が登場するMVも大人気の“フローネル”だ。タイトルが「風呂」と「寝る」を掛け合わせた造語であることからもわかる通り、入浴と睡眠が我々に与えてくれる絶対的な悦びが見事に表現されている。この曲に関して特筆すべき重要なポイントは、盛り込まれている大澤敦史(G・Vo/以下、会長)の名調子による語りだろう。厳しい現実との戦いの連続であった1日が終わり、自宅に帰ってから湯船にお湯を張るまでの過程で味わうことができる胸の高鳴り、湯船に浸かった瞬間の凄まじい愉悦、惰眠をひたすら貪る時の恍惚、二度寝の絶頂感の描写は、激しく引き込まれずにはいられない。ライブでこの曲が演奏される際も、会長の語りの部分が観客を熱狂させている。

●猫の惑星
絶妙な丸いフォルム、フワフワな感触、癒しを与える程よい体温、振り回されるのが心地よい気まぐれな性格、吸い込まれそうなつぶらな瞳など、愛くるしさの条件を完璧に備えている究極の生命体「猫」。紀元前のエジプトの遺跡から猫の骨やミイラが発掘されていて、猫の女神・バステトが崇拝の対象だったことも示す通り、長年にわたって人類と非常に関わりが深いこの動物について、狂おしく、力強く、ドラマチックに描いているのが“猫の惑星”だ。
《ソファーで爪研ぎしても怒らない》、《障子ビリビリにしても怒らない》といった歌詞のフレーズが出てくるが、古代エジプト人たちも、ピラミッド建設用の石材で猫が爪研ぎをしてしまったり、パピルスの書類をビリビリにされたりで、頭を抱えることが度々あったのではないだろうか。しかし、どんなに理不尽ないたずらをされたとしても、猫の愛くるしさを前にしたならば、絶対的な権力者である王もひれ伏す他なかったはずだ。地球のヒエラルキーの頂点に君臨する動物とは一体何なのか? この曲に耳を傾けると、その答えは自ずと見えてくる。

●もつ鍋が呼んでいる
傷つき、疲れ、何もかもが自分を見放しているように感じた1日に、我々が縋るべきなのが、美味しい食べ物だ。しかし、その選択に関しては、細心の注意を払わねばならない。例えば、お寿司、焼肉、うな丼がとても美味しくて、心身を満たしてくれることは疑う余地がないが、食べ終わった後のお会計で直面する数字と、それに伴う支払行為は、我々を失意のどん底に突き落とす。
このような非情な現実を踏まえるならば、癒しを得るための食べ物は「美味しい」に加えて「安い」ということも必要な条件となってくる。さらに欲を言うならば、安らぎを得られる「温かさ」も兼ね備えていれば、言うことがないわけだが、果たしてそんなに都合の良いものが存在するのか? このような迷いを抱えた時に、ぜひ口ずさむべきなのが、“もつ鍋が呼んでいる”だ。もつ鍋がもたらす無限の喜びを描いた後に突入するクライマックスが美しい。「♪ラララ~」という壮大な歌声が響き渡る様は、ぐつぐつと煮える鍋から立ち上った湯気のようなイメージを鮮やかに喚起してくれる。

●布団の中から出たくない
打首獄門同好会の描く題材が、国境を越えた普遍性を持っていることを証明したのが“布団の中から出たくない”だ。コウペンちゃんのアニメーションがキュートなMVがYouTubeで公開されたのが、2017年12月22日。そこからあまり時間も経たないうちに中国語字幕付きの非公式映像が拡散されたのを皮切りに、英語圏を含む様々な地域に反響が広がっていった。「寒い冬は布団から出たくない」というのは、どうやら日本人特有の気質ではないらしい。
この曲のサウンド面については「カノン進行」であるのも興味深いポイントだ。「カノン進行」とは、専門的になり過ぎない範囲で大雑把に説明するならば、自然で親しみやすく感じられるコード進行であり、J-POPを含めた様々なポップスで多用されている。これが醸し出すストレートなキャッチーさも、幅広い層に受け入れられることに繋がった理由なのかもしれない。
“布団の中から出たくない”と対になっている曲とも言うべき“なつのうた”も、素晴らしい出来栄えなので、気になる人はチェックすることをオススメする。爽やかなボサノバ風味のサウンドとデスボイス&爆音によって、空調の効いている快適な室内と、外の世界に広がる猛暑のギャップが表現されている。この曲のMVでのコウペンちゃんも、とんでもないほど可愛らしい。 rockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)