未来人役もひょうひょうとこなし“本家”スター・ウォーズから偵察が来た 「宇宙からのメッセージ」 成田三樹夫の系譜

引用元:夕刊フジ

 【怪優・成田三樹夫の系譜】

 ■「宇宙からのメッセージ」(1978年 深作欣二監督、東映)

 時には突拍子もない映画が現れるものだ。ヤクザもので鳴らした深作欣二監督が、よりによってSF映画に手を出すとは、当時誰も想像しなかったのが本作。同じように真田広之がその映画の主演を務めるとは…。

 成田三樹夫もストーリーを引っ張る重要な役で出演している。成田はあるインタビューで「僕はあまり努力しない。役作りでもあまり深刻に考え込んだりなんてしないもんね。現場で勝負っていう感じだね」と語っている。本作でもひょうひょうと未来人の悪人「ロクセイア12世」を演じきっている。これぞ成田の神髄だろう。

 この作品は江戸時代の戯作者・滝沢馬琴の名作『南総里見八犬伝』をベースにした世にも珍しい和製スペースオペラ。最終的には全米3000館で上映され750万ドル以上の興行収入があった。

 批評家からは「たくさんあるスター・ウォーズのダミー映画にすぎない」「便乗商法だ」と酷評される一方、ファンからは記憶に残る1本という声があったのも事実。

 確かにスター・ウォーズに似ていなくもない。チューバッカやレイア姫のソックリさんが登場している。しかし南総里見八犬伝のほうがスター・ウォーズより断然古いのだから、むしろスター・ウォーズのほうがマネしているんじゃないのと突っ込みたくなる。

 撮影中にスター・ウォーズのスタッフが偵察(?)にきたこともある。あまりにも出来がよかったため、本家の『エピソード6/ジェダイの帰還』ではデス・スターに潜入するシーンで本作をほうふつさせるシーンも発生する珍現象も。

 撮影でもさまざまな障害が。まず千葉真一は鉄格子に足をはさまれ骨折し、撮影を後回しにせざるを得なかった。深作は演出の食い違いから、どうせ日本語は分からないだろうと高をくくってビッグ・モローに「おまえなんかいらん。帰れ」と怒鳴ったところ、意味が通じたのか本当に帰ってしまった。

 もっとひどいのはウロッコ役。予定していた室田日出男が薬物事件で逮捕されたのだ。

 撮影に使われた実物大の宇宙戦艦はセットモデルとして東映太秦映画村に1990年代まで展示されていたから見たことがある人もいるかもしれない。デザイン画は石ノ森章太郎が担当。500枚ほど描いたという。(望月苑巳)

 ■成田三樹夫(なりた・みきお) 1935年1月31日生まれ、山形県出身。俳優座養成所の同期には松山英太郎、山本圭、中村敦夫らがいる。90年4月9日、スキルス胃癌のため55歳で死去した。