オルタナティブロックを世界に知らしめたソニック・ユースの『Goo』

引用元:OKMusic
オルタナティブロックを世界に知らしめたソニック・ユースの『Goo』

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回はソニック・ユースのメジャー移籍第一弾アルバムであり、オルタナティブロックの概念を世界中に浸透させた重要な作品『Goo』を取り上げる。『Goo』のリリース以降、ニルヴァーナ、パールジャム、サウンドガーデンらが次々と世界的な大成功を収めることになるのだが、その先駆的な存在としてソニック・ユースが果たした役割は大きく、90年代以降のロックの方向性を決めたと言っても過言ではないだろう。本作が、オルタナティブロッカーたちにどれだけ大きな影響を与えたのかを考えてみたい。
※本稿は2016年に掲載

メジャー vs インディーズ

音楽産業の巨大化が進む70年代中期、ロックはすでに若者のものではなく、お金を落としてくれる社会人(かつてのロック少年たち)向けの耳ざわりの良い音楽となっていた。もはやロックとは呼べない音楽ばかりがチャートを賑わすようになると、既成の音楽を破壊し、若者のものとして再構築するために新たな“ロック”が必要となった。そして、誕生したのがパンクロックである。

しかし、パンクロックもあっと言う間にメジャーのレコード会社にからめとられてしまう。反骨心を持つロッカーたちはインディーズレーベルや自主制作で作品をリリースするようになり、一旦は各地域でのライヴ活動が中心となっていく。80年代に入ると、シンセサイザーをはじめとする電子機器の普及でロックの方法論は大きく変化し、テクノやエレクトロポップが主流になるのだが、MTVの登場もあって、売れる音楽と売れない音楽の差は広がった。例えば、マイケル・ジャクソンの『スリラー』(‘82)などはレコードだけでなく、ビデオの大ヒットもあって、全世界で1億枚以上を売上げる結果となった(未だにこのギネス記録は破られていない)。

メジャー対インディーズの結果は、ここまではメジャーのひとり勝ちのように見えるのだが、地下に潜っていたかのようなインディーズのミュージシャンに光が当たるのは、一般のリスナーがCMJ(カレッジ・メディア・ジャーナル)に注目する80年代中期になってからだ。