テレ東、異色新企画の制作秘話 「池の水」伊藤P&「YOU」小平Pがタッグで“真冬のド素人農業”

テレ東、異色新企画の制作秘話 「池の水」伊藤P&「YOU」小平Pがタッグで“真冬のド素人農業”

 テレビ東京は15日、日曜ビッグバラエティの新企画「いつものゴハンを1から作る」(後7・54)を放送する。農業に関する知識ゼロのタレント9人が、都会のど真ん中で114日間にわたって野菜の栽培に挑戦する“食育バラエティー”。「池の水ぜんぶ抜く大作戦」などで知られる伊藤隆行氏がプロデューサーを務め、「YOUは何しに日本へ?」のプロデューサーを務める小平英希氏が演出を担当する。異色番組の誕生経緯や制作秘話を、同局が誇る2人の敏腕テレビマンに聞いた。

――「農業×バラエティー」という異色の組み合わせ。どういったきっかけでこの企画を思いついたのでしょうか。

伊藤氏 小学2年生の娘が学校でミニトマトを栽培して、家に持って帰ってきた時でした。食べたらめちゃめちゃ酸っぱくて、正直おいしくなかったんですよ(笑い)。それで妻と“近くのスーパーに置いてある野菜や果物って、実は凄いんだね”と話をしたことがきっかけです。あと、うちの上司が何人かで農家を始めたことや、「鉄腕DASH」(日本テレビ「ザ!鉄腕!DASH!!」)しか本格的に農業に手をつけている番組はないんじゃないかという思いがあったんです。そういった素地があった中で、今回の企画が生まれました。

――企画が動き始めたのはいつ頃だったんですか。

小平氏 野菜の種をまき始めたのは11月の始めです。種を植えた時は“育たなかったらどうしよう、番組にならないぞ”と、おそらく全スタッフが不安だったと思います。でも、怒られるのは伊藤さんなので(笑い)。

伊藤氏 怒られるのは僕なんです(笑い)。でも、育たなかったら育たなかったで放送しようという覚悟はありました。野菜が1つでも育ってくれれば、何とか番組になるかなという“最終ライン”は考えていましたね。小平君は「モヤモヤさまぁ~ず2」で一緒だったこともあってよく知っているので、もう丸投げですね(笑い)。この男に丸投げしたら、ほとんど動かない物体が主体になっている番組をどう撮ってくれるのか楽しみだったんです。

――MCはサンドウィッチマンのお2人。

伊藤氏 サンドさんは言わずと知れた大人気コンビです。そういう人たちがテレビ東京に出るとなると、相当意味のあることじゃないといけない。都会の真ん中で農業に挑戦するという珍しい番組だし、食育もテーマになると思ってダメ元で出演を依頼したら、“面白そうですね”と快諾してくれました。

――ロケ地はまさかのお台場。フジテレビの社屋も見えていますね。

小平氏 最初は地方も候補地だったんですけど“都会でつくったほうが難しいよね”ということで。都内で場所を探したところ、ロケーション的に面白いということでお台場の屋上に決まりました。実際に栽培がスタートする前は、全員が農業について何も分からないので、“ビルの屋上でやってみたら面白いんじゃない?”というくらいの感覚でしたね。

――全員が初挑戦だった農業。予想外だった部分もあったと思います。

小平氏 お台場は潮風が強くて、夜になるとすごく寒いんです。芽が出た野菜たちが枯れていった時はかなり焦りましたね。しおれていく様子を定点カメラの映像で見ると、すごくかわいそうなんです。みんな、自然と野菜に感情移入してきましたね。自分の手で野菜を育てているタレントさんたちは、僕たち以上に感情移入していたと思います。

伊藤氏 食物を育てるには、非常にきつい環境でしたね。そもそも真冬で食物が育ちにくい状況で、そこに潮風が吹く。専門家の先生からも“厳しいと思います”と言われました。そして我々の中に農業経験者はゼロ。無謀なことをやっているんだなと途中で気づきましたね。

――そうした中でも野菜の収穫に成功したようですね。

伊藤氏 収穫をする時の収録では、まさかの感動もありました。サンドの伊達さんも“やばい、ちょっと泣きそうだわ”って。もしかしたらちょっと泣いていたかもしれませんね。

――北海道でカニの漁に出たり、最後に収穫した野菜を一流料理人が調理することも最初から考えていたんですか。

伊藤氏 サンドさんが最初にVTRを見たときに“鍋食いたいな”と言ったんです。そこから“出汁はどうするんだ?”、“昆布だよね”、“北海道ならカニ獲れるな”、といった風にどんどん展開していって、漁に行かざるをえなくなったという流れですね。ちなみに、収穫した野菜を「賛否両論」の笠原将弘さんに料理してもらうんですけど、それも“後付け”です。実は収穫する数日前に笠原さんにお願いしたんです。せっかく収穫するんだから最高の食べ方をしたいと思って。そこはテレビっぽいですよね。

――料理を食べた感想はいかがでしたか。

小平氏 小さいニンジンを食べましたが、おいしかったですよ。味もちゃんとしたニンジンでした。でも、やっぱり農家の人って凄いと思いましたね。ちゃんと全部同じような形で出荷していますもんね。

伊藤氏 大人にとっても子どもにとっても、非常に学びがある番組になりましたね。口に入るまでにいろんな困難を乗り越えて、ようやく育ってくれた食べ物を平気で捨てたり、残したりできなくなりますね。

――番組にキャッチフレーズをつけるとしたら、どういったものになりますか。

小平氏 今回は冬というのがキーワードなので…、「真冬のド素人農業」ですかね。

伊藤氏 それに少しアレンジを加えて、「真冬のド素人農業~復活!ニョキニョキ植物王国~」。テレビ東京ファンの方はもしかしたらご存知かもしれないですけど。

――シリーズ化の構想もあるのでは。

伊藤氏 レギュラー化したいですね!ゴールデンではなくても、毎週放送したいと思っています。

小平氏 次は米を育ててみたいですね。あと、今回は冬だったので夏の野菜もつくってみたいです。

伊藤氏 サンドウィッチマンさんはレギュラー化されたら“子牛を育てよう”と言っていましたよ。泣いちゃうだろうなあ。

――お2人が思う、一番の見どころを教えてください。

小平氏 定点カメラの映像ですね。「命」を感じられるので、ぜひ子どもたちに見てほしいです。

伊藤氏 僕も定点カメラの映像です。苦しみながら地道に伸びて行く様子に“生きているんだな…”と感じさせられるのかもしれません。あとは収穫されたニンジン。初めて見るような面白い形のニンジンが出てきます。