広瀬すず、役柄に“共通点” 「両親がそろっていることがあまりない」

広瀬すず、役柄に“共通点” 「両親がそろっていることがあまりない」

 映画・ドラマ・舞台と出演作が続く女優・広瀬すず。最新映画『一度死んでみた』では、スタッズ付きの革ジャンにピンクの髪の毛、デスメタルバンドのボーカルを務め、父親に「一度死んでくれ!」と絶叫するファンキーな女子大生・七瀬を演じた。確実に役柄の幅を広げつつある広瀬だが、近年演じる役柄の共通点を発見してしまったというのだ――。

【写真】透き通るような美しさ…広瀬すず撮り下ろしインタビューカット

 NHK連続テレビ小説『なつぞら』では、女性アニメーターとして道なき道を切り開いていく強い女性を演じ、今年公開の映画『ラストレター』では、誰もがうらやむ優等生を圧倒的な透明感で表現。さらに『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018)では、田舎から出てきた“ダサい”女子を、映画『怒り』(2016)、『三度目の殺人』(2017)、ドラマ『anone』(日本テレビ系 2018)では、陰のある少女を奥行きたっぷりに演じ、本作では前述したような“ぶっ飛んだ”キャラに挑んだ。

■ 朝ドラの合間の撮影 新しい役へのアプローチに挑戦

 これまでもコミカルなキャラクターを演じることはあったが、ここまで“崩した”役は初めて。しかも、共演の吉沢亮とは『なつぞら』でも互いに意識し合うという似た関係であり、本作の撮影は、朝ドラを挟んで行われたという。つまり、朝ドラの撮影、本作の撮影、そしてまた朝ドラの撮影に戻るというスケジュールだった。
 
 普段は撮影が終わり、自宅で家族と過ごしていると役が抜けることが多かったというが、本作では、上記のような状況もあり、撮影がないときも髪型や衣装など映画に寄せた形で過ごしていた。「(朝ドラも映画も)吉沢くんとの共演で、役柄こそ全然違いますが、互いの存在という意味では近いものがあったので、あえて髪型とか服装を映画のときの状態に寄せることで、きっちりと朝ドラと分けられるのかなと思ったんです。ここまでデフォルメされたキャラでなければ、切り替えに苦しんだかもしれません」。

 なかなか厳しい環境での撮影のように感じられるが、朝ドラのスケジュールに挟まれた撮影だったことで、かえって新しい役へのアプローチ方法を試すことができた。「常に髪の毛や爪など七瀬を感じるものが目に入ってくるので、すごく役を近くに感じられて、一つの役の作り方としては面白い経験ができました」。

■ 演じる役柄の“共通点” 監督に尋ねると…

 偏ることなく幅広い役柄に挑んでいる広瀬。スタッフやマネージャーなど周囲の人間に「役を選んでもらっている」という感覚が強いと明かす。「もともと私自身は重たい映画を好んで観る傾向があるんです。自分でもし役柄を選んでいったら、重い映画ばかりに偏ってしまっているかもしれません」と苦笑いする。
 
 そんな広瀬は「最近感じていることがあるのですが、基本的に両親がそろっていることがあまりないんですよね」とつぶやく。たしかに本作では、母親(木村多江)は他界し、『なつぞら』では戦災孤児のため両親はおらず、『ラストレター』の鮎美役は、母は亡くなっている設定で、『anone』でも、幼少期に両親と別れている。
 
 広瀬が「なんでなんだろう」という疑問を監督に投げかけると、共通して「なにか抱えているように感じる」という答えが返ってくるという。しかし、そんな部分も「自分にとっての武器になればいいのかな」と前向きにとらえている。

■ 女優業7年 “忘れてはいけない”感覚

 役柄についてあまり決め込まずに現場に臨むが、一つ一つのセリフの意味は深く考えてしまう癖があるという広瀬。しかし本作は対峙する相手とのテンポが非常に重要になってくるコメディ作品。「とにかく難しかった」と感想を述べていたが「昨年初めてやった舞台で(演出家の)野田秀樹さんから『よく分からないセリフは考えずにぱんっと言った方がいい』とアドバイスを受けたんです。やってみると『なるほどな』と思いました。そのときこの映画のことを思い出して反省しました」と笑う。
 
 女優業を始めて7年。キャリアを重ね、作品のメインを張ることも多くなった。「自分が主演ではなく参加させていただいた作品で見る、座長と呼ばれる方の背中は格好いい。でもまだ自分では『行くぞ!』みたいな感じにはできないんです。この作品でも(父親役の)堤真一さんや吉沢さんにおんぶに抱っこで…」と課題を打ち明ける。さらに「あまり緊張する機会が減ってきたなと感じることもあります。それは決して悪いことではないんですが、『怒り』のオーディションで味わったような、ガチガチになるような感覚も忘れてはいけないんだと思います」と気を引き締めていた。(取材・文:磯部正和 写真:松林満美)

 映画『一度死んでみた』は3月20日公開。