渡辺王将VS広瀬八段 王将戦今期3度目の角換わり 1日目なのに終盤戦のようなノーガード打ち合い

渡辺王将VS広瀬八段 王将戦今期3度目の角換わり 1日目なのに終盤戦のようなノーガード打ち合い

 ◇第69期大阪王将杯王将戦 7番勝負第6局第1日(2020年3月13日 佐賀県上峰町・大幸園)

 渡辺明王将(35)が2勝、広瀬章人八段(33)が3勝で迎えた第6局は、先手の広瀬が午後6時、67手目を封じて指し掛けとなった。戦型はシリーズ3度目の角換わり。先手広瀬が敵陣に金を打ち込み、終盤戦と呼べそうな局面まで進行した。渡辺が勝ち5期ぶりの第7局突入か、広瀬の初奪取か。対局は14日午前9時に再開する。

 盤上の景色はもう2日目午後だった。第1日指了図の局面、渡辺王は露出し、広瀬王を守護する要の金は桂の直射にさらされている。

 今期挑戦者決定リーグに加わり、広瀬と挑戦権を争った副立会人・糸谷哲郎八段(31)は角換わりの第一人者。1日目の進行で広瀬の15手目▲1六歩~1五歩が印象的とした。序盤の端歩2手は功罪両面があるためだ。

 昼食休憩時「結果的に(渡辺に)右王を強要した。主張は通った」と広瀬は手応えを示し、渡辺は「右王は経験のない進行。午前中から神経を使うところが多かった」と認め、△6五歩と反発した36手目について「(広瀬からの)反発がどれくらい痛いかの戦い」と解説した。広瀬の端歩が右王を誘発し、中央での攻防へとドミノ倒しのように局面が進んだ。

 55手目▲4五桂から敵陣に銀を打ち込み、清算してさらに▲7二金。渡辺は△6六桂と攻め合った。「▲4五桂からお互いに選択肢がない。夜のうちに考えをまとめたい」と渡辺。広瀬も「予想以上に進んだ。王型の安定が生かせれば」と展望した。

 第3局以降、終局が3局連続2日目の午後7時を過ぎる熱戦が続く。そのヤマ場が24時間早まった。定跡無用の手将棋は、渡辺が勝てば第64期、郷田真隆九段(48)が王将戦史上最高齢44歳で初めて王将に就いて以来のフルセット、広瀬が勝てば昨年12月に失った竜王以来、待望のタイトルとなる。

 佐賀平野や有明海、晴れれば雲仙・普賢岳まで望める、鎮西山の麓にある対局場。ノーガードで打ち合う2日目の展望まで見通せたのは、どちらだろうか。

 ≪封じ手は?≫

▼立会人福崎文吾九段 ▲6七歩だろう。守りの手で相手の攻めを緩和し、局面をスッキリさせる。

▼副立会人糸谷哲郎八段 ▲6六同銀。自分の王に迫るピンチを一手防ぎ、取った桂を攻めに回す。

▼記録係田中大貴三段 ▲6六同銀ではないか。金取りの桂を食いちぎる。▲6七歩では横腹が寂しい。