劇作家、別役実氏死去 日本の不条理劇を確立

引用元:産経新聞

 戦後の日本演劇界で、不条理劇を確立した劇作家、別役実(べつやく・みのる)氏が3日午前0時12分、肺炎のため死去した。82歳。葬儀・告別式は親族のみで行った。しのぶ会を開く予定だが、詳細は未定。

 昭和12年、旧満州生まれで、第二次大戦後に引き揚げた。早稲田大学で演出家、鈴木忠志氏らと出会い、劇団「自由舞台」(後の早稲田小劇場)を結成。アイルランドの劇作家、サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」など、不条理劇に影響を受け、36年に処女作「AとBと一人の女」を発表。42年「マッチ売りの少女」「赤い鳥の居る風景」で岸田国士戯曲賞を受賞。

 電信柱とベンチだけの簡素な舞台に、「男1」や「女1」など固有名詞のない人物が登場し、奇妙な会話から宇宙的な広がりを表現する独特の世界観で、日本の不条理劇を確立した。

 43年、早稲田小劇場を離れてからは、文学座ほかさまざまな演劇団体に作品を提供。多作で知られ、平成30年10月に上演された144本目の戯曲「ああ、それなのに、それなのに」が最後の作品となった。

 代表作に「象」「やってきたゴドー」など。童話作家としても知られ、評論やエッセーなどでも多彩に活躍。日本劇作家協会会長、兵庫県立ピッコロ劇団代表なども歴任した。平成25年、日本芸術院会員。紀伊國屋演劇大賞個人賞など、受賞歴多数。

 近年はパーキンソン病を患い、入退院を繰り返しながら劇作を続けていた。27~28年、19の演劇団体が横断的に別役作品を上演する「別役実フェスティバル」が開催されるなど、演劇人に大きな影響を与えた。