『R-1』無観客で異様な空気 出場芸人は淡々?「メンタル鍛えられて…」

引用元:オリコン
『R-1』無観客で異様な空気 出場芸人は淡々?「メンタル鍛えられて…」

 “ひとり芸”No.1決定戦『R-1ぐらんぷり2020』が8日、都内で行われ、お笑いコンビ・マヂカルラブリーの野田クリスタルが優勝。新型コロナウイルス感染拡大予防のため、一般客の来場を取りやめて史上初の“無観客”大会となった点も大きく注目を集めた。審査員の桂文枝、関根勤、久本雅美、陣内智則、友近、勝俣州和の言葉やネタ中の空気、ファイナリストたちの言葉から今回の大会を読み解きたい。

【写真】『R-1ぐらんぷり』を優勝した野田クリスタルのネタ

 大会の様子はカンテレ・フジテレビ系全国ネットで生放送(後7:00)。今回の状況を踏まえて、同局は視聴者の声をより反映させ、番組を盛り上げる施策として、視聴者投票を実施することが決定した。審査員の評価に加え、視聴者投票として、テレビのデータ放送による「dボタン投票」と、同大会ツイッター公式(@R1GRANDPRIX)からの投票を受け付けると放送前に発表した。

 各ブロックを勝ち上がった3人によるファイナルステージでも同様の審査を行い、優勝者が決定する。決勝進出を決めているファイナリストは、Aブロックはメルヘン須長、守谷日和、SAKURAI,、野田、Bブロックはルシファー吉岡、ななまがり森下、パーパーほしのディスコ、すゑひろがりず南條、Cブロックはヒューマン中村、おいでやす小田、ワタリ119、敗者復活を勝ち上がった大谷健太となった。

 大会に入る前、勝俣が冒頭で「我々、審査員というよりも、お客さんがいない状況で、100%でぶつけてほしいですよね。みんなで盛り上げていきましょう」と宣言。友近は「芸人さんのタイプによっては、お客さんがいない方が本当にやりたいことをぶつけられるタイプもいらっしゃると思う」と話しながら、得意ネタである上沼恵美子のものまねをしながら「ここはもうリサイタルなんだということで…こんなところにCDが」と『M-1』での名場面を再現し、和やかな雰囲気でスタートした。

 それでも「無観客で笑いを評価する」という空間へのざわつきがあったAブロックでは、激ムズゲームネタを披露した野田が勝ち上がった。3票中、野田に2票を投じた勝俣は「いい意味でなんですけど、意外とくだらない笑いがウケましたね。爆発力がありました」と指摘。ネット上では「シュールだな」「『細かすぎて伝わらないモノマネ』を見ているよう」「『あらびき団』みたい」と観客がいない中での笑いに関する声が相次いだ。

 Bブロックでは、乳首を隠さないというコントを披露した森下に審査員が注目。陣内が「無観客でよかったわ。お客さんおったらどうなる。18分くらいやってなかった」とイジると、久本も「よく勝ち残ってきた、すごいなもう」と驚き。結果的には森下、ほしの、南條が9ポイントで横並びとなり、文枝も「激戦でしたね。森下さんはなんで最後まで乳首を隠さないのか。これが観客あるともっと盛り上がるか、そこがわからない」と率直な思いを打ち明けながら総評した。

 Cブロックでは、『R-1』ファイナリスト経験者の中村と小田が安定のネタ運びで笑いを取る中、「もし僕が3分以内にネタが終わらなかったら、視聴者のみなさん、僕には投票しないでください」と訴えて、時間内に終えると「時間が余ったのでギャグをします」と全力で持ち時間の3分を駆け抜けたワタリ、敗者復活から勝ち上がってきたダークホースの大谷が躍動。ここでも票が割れ、結果的に大谷にファイナルステージへと進出した。

 ファイナルステージは、ゲームネタで笑いを取った野田が圧勝。文枝が「無観客を感じさせないで本当に頑張ったと思います」と芸人たちに賛辞を送ると、久本も「本当にすばらしかった」と健闘を讃えるなど、番組が終わりへと向かっていく雰囲気を醸し出す中、蛍原が「意外に時間が余りました」とにっこり。ファイナリストたちが助け合いながら時間をつなぐほほえましい光景も見られながら、前代未聞の無観客大会は幕を閉じた。

 優勝者会見で、野田は無観客大会について「僕は無観客の方がやりやすいのかなと。今回はスタッフさんがいたんですけど、完全なる無観客の中でやるネタ番組とかあって、メンタル鍛えられて、『あらびき団』というんですけど(笑)。それに比べたら楽です」ときっぱり。大会後に行われた打ち上げ配信では、Aブロックのファイナリストたちから意外な声が寄せられた。

 SAKURAIが「普段、ほぼ無観客ライブしか出てないんですよ。だから、きょう意外と普段と同じような感じで落ち着いてできました。人が若干多いなくらいでしたね(笑)。MC席とか審査員のみなさんから笑い声とか聞こえたんですよ。けっこうそれが励みになりました」と話すと、須長も「お客さんが3人くらいの地下ライブが普段のホームなので」とあっさりと話す姿は印象的だった。

 無観客でスタッフと審査員たちの笑いのみが響く空間は異様であったが、実際に舞台に立った芸人たちは、これまで経験してきた環境に置き換えたりしながら、ネタを見せていった。異例の事態でも笑える環境を作るのは見事だったが、やはりいつものように観客の笑い声が響いて、笑いが増幅されていく様子も早く見たいという気持ちにもなった。