ポピュラー界のトップに君臨するマドンナの『ライク・ア・ヴァージン』

引用元:OKMusic
ポピュラー界のトップに君臨するマドンナの『ライク・ア・ヴァージン』

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回はマドンナの長いキャリアの中にあってもっとも初期の、しかしながら世界のトップスターの仲間入りを果たしたメガヒット・アルバム『ライク・ア・ヴァージン』を紹介する。
※本稿は2016年に掲載

それまでとは異質な80年代のロック

1970年代中期、パンクロックやAORの台頭で、ロックのリスナーが幅広い年齢層に広がっていることが認知されるようになった。その後、80年代に入るまでの数年間はフュージョン(クロスオーバー)やニューウェイヴが登場してきたものの、そう大きな変化はなかったと言える。その停滞した空気を一掃するかのように、70年代の終わりから80年代の初めに入ると、電子機器の急激な進歩もあって、それまでには考えられなかったような音楽が次々と生み出されることになった。

例えば、ヒップホップ文化の中で生まれたラップ(シュガーヒル・ギャングの「ラッパーズ・デライト」)、エレクトロポップ(バグルスの「ラジオ・スターの悲劇」)、テクノ(イエロー・マジック・オーケストラの「ライディーン」)、ニューロマンティック(ウルトラ・ヴォックスの「ヴィエナ」)、エスノロック(トーキング・ヘッズの「ボーン・アンダー・ザ・パンチズ」)など、その多くがシンセサイザーやドラムマシンを使った“打ち込み”や“サンプリング”によるサウンド作りが特徴である。故デヴィッド・ボウイ、スティーブ・ウインウッド、ピーター・ゲイブリエルら、70年代に活躍したロッカーたちも新しい流れに乗り遅れまいと、それらの新しい機器や音楽を取り入れながら、新たな自分の音楽を構築していた時代である。ミュージシャンたちの多くが、アナログ録音とデジタル録音の狭間にあって、転換期をどう乗り越えるか、正念場を迎えていたと言えよう。

MTVのスタート

そして、80年代初頭における音楽業界最大の変革と言えば、今では存在が当たり前になっているが、ミュージックビデオを1日中流すMTVが81年にアメリカで始まったことだ。MTVは放送開始以降現在まで、もっとも影響力を持つメディアとして世界中で広まっていく。その力を最大限に発揮したのは、83年にリリースされたマイケル・ジャクソンの「スリラー」である。カルチャー・クラブやデュラン・デュランも、ビデオ戦略によって第2期ブリティッシュ・インベイジョンと言われるほどの大きな成果を上げてはいたが、当然音楽が主体で、映像は従属するものであった。それに比べて「スリラー」は映画的な手法(映画監督を起用した)で制作されていただけに、それまでのミュージックビデオとは一線を画する出来栄えであったし、これが大ヒットしたことで、これ以降ミュージックビデオは格段に進化することになる。音楽と映像、両者の相乗効果によって、アルバム『スリラー』の売上げは全世界で1億枚を突破していて、そのギネス記録は未だに破られていない。