人は違っていて当然と悟ったアンミカの過酷な被害者意識

人は違っていて当然と悟ったアンミカの過酷な被害者意識

【今週グサッときた名言珍言】

「激貧乏だったけど、商店街のガラガラで、うちの家電全部そろえた」(アンミカ/テレビ東京「あちこちオードリー~春日の店あいてますよ?~」2月22日放送)

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 アンミカ(47)といえば、パリコレにも参加経験のあるファッションモデル。現在はその明るくポジティブなキャラクターでバラエティー番組に引っ張りだこの存在だ。そんな彼女は「私、昔から願いがかなわなかったことがないの。大概かなうの」と胸を張る。そして「クジ運がすごく強い」と語った上で、例を挙げたのが今週の言葉だ。

 アンミカは韓国生まれ。4歳の頃、大阪に移住し日本で育った。4畳半一間で両親ときょうだい5人の7人でコリアンタウンでの極貧暮らし。そんな中で彼女は顔に大ケガを負った。そのケガの影響で、ニコッと笑うと唇がめくれ上がってしまうようになり、コンプレックスで笑えなくなってしまったという。

 小3の頃、ようやく引っ越すことができるも、学校では「韓国人差別」に遭うようになった。親はラーメン屋を始め、はやり始めたと思ったら、家が火事で全焼。働きづめだった母は、アンミカが15歳のとき、病気で亡くなった。

 そんな過酷な状況で、彼女の中に「被害者意識」が生まれていった。「この子は貧しくて、親も病気で大変」と腫れ物のように周りも優しくしてくれる。そうやって「特別扱いしてもらってると、だんだん同情されグセがつく」(Cyber Now「新R25」2019年12月11日)とアンミカは振り返る。「『被害者でいること』に居心地のよさを感じているので、変わろうという発想が生まれにくくなる」(同前)ことに気づいた。

「被害者意識を持っちゃうと加害者が生まれるんだよね。『私はこんなことされた』って思うと、加害者が生まれる。加害者が生まれると憎しみが生まれる。憎しみとかってね、すごい恐ろしい執着に変わって。嫌いな人ができると、意識するからしんどいのよ。人の幸せなんて、その人の頭がつくることやから」(関西テレビ「グータンヌーボ2」19年9月3日)

 だったら、ポジティブに物事を捉えた方がいいに決まっている。例えば自分は「クジ運がすごく強い」と思い込めば、ムダな被害者意識から解放される。冒頭の番組で、どうやったら自分の意見をはっきり言えるのかと問われ、彼女はこう答えた。

「千差万別で十人十色で、みんな一緒なわけがないやん。育ってきた環境も考え方も家族構成も違う。傷ついた経験もどこで傷つくかも違う。大前提として、全員に好かれるなんて無理です。と思ったら開き直れない?」

 人は違っていて当たり前。だから被害者でも加害者でもない。嫌われることを恐れる必要はないのだ。

(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)