『弥生、三月』と名作ラブストーリーの共通点って? 天野ひろゆき・光浦靖子・大久保佳代子が語りつくす!【前編】

引用元:Movie Walker
『弥生、三月』と名作ラブストーリーの共通点って? 天野ひろゆき・光浦靖子・大久保佳代子が語りつくす!【前編】

「同期のサクラ」「過保護のカホコ」「家政婦のミタ」など、多くのヒットドラマを生みだしてきた脚本家の遊川和彦が監督した、激動のラブストーリー『弥生、三月 -君を愛した30年-』が3月20日(金)に公開される。

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主人公の結城弥生を演じるのは、これまでも連続テレビ小説「あさが来た」や「あなたのことはそれほど」などの話題作で様々なキャラクターを演じてきた波瑠。弥生と運命で結ばれた山田太郎、通称サンタを演じるのは、『カツベン!』(19)や『窮鼠はチーズの夢を見る』(6月5日公開)で注目を集める成田凌。そして杉咲花、岡田健史、小澤征悦、黒木瞳といった実力派俳優が脇を固め、物語にさらなる成熟と深みを与えている。

この映画の魅力は、名作と言われる恋愛映画の要素がぎゅっと詰まった王道ラブストーリーでありながらも、“ふたりの男女の30年間を3月だけで紡ぐ”という新しい描き方をしていることだ。そこで、この映画の主人公たちと同世代の天野ひろゆき、光浦靖子、大久保佳代子に、自身の恋愛を振り返りながら『弥生、三月』の魅力と共に往年の名作ラブストーリーを語り尽くしてもらった。今回は、その前編をお送りする。

■ 「やっぱり恋愛映画においては、惹かれ合う男女がすれ違ってこそ物語が盛り上がる」(大久保)

天野「今回『弥生、三月』というラブストーリーを語るために集まったわけだけど、この映画と僕らには“共通点”があります!」

大久保「えっ、なんだろう…」

天野「主人公の弥生や太郎、サクラが生まれたのは1970年」

大久保「あ、私71年生まれ」

光浦「私も!天野さん70年だから映画の主人公と私たちは同学年のようなものだ!」

天野「そう。だからこの映画のなかでウォークマンとか携帯電話が出てくるタイミングとか、すごく懐かしかったんじゃない?それにしても、波瑠ちゃんと杉咲花ちゃん、かわいかったなあ」

光浦「ほんと、かわいかったー。杉咲さんの演じるサクラは、弥生と太郎に大きな影響を与える存在で印象に残る演技だったし。波瑠さんの演じる弥生は、一本の映画のなかで、高校生から50歳のおばさんになるまで演じていて、すごいなあって」

天野「そうそう。バスを追いかけて走るシーンとか、年齢によって違いを出していて。高校生のエピソードで印象的だったのは、サクラを守るために教室で啖呵を切るシーン、あの時の弥生はほんとかっこよかった」

大久保「そのシーンで太郎は弥生に惚れちゃうんですよね。その気持ちもわかるなぁ」

天野「で、君たちはいま、恋をしているの?」

大久保「最近、恋してないですね」

光浦「私の場合は、もう『好き』という感情が生まれなくなっていて…。だから『弥生、三月』に満たしてもらいました。私のような人のためにも恋愛映画は大事!」

天野「この『弥生、三月』の弥生と太郎は、ほんとすれ違ってばっかりだったよね」

大久保「たしかに。出会ってから30年の間にこんなにもいろんなことが起きて、ふたりの気持ちが交わりそうで交わらなくて、お互いに想っているのに、どうしてなのーって、すごくもどかしかった」

光浦「もどかしかったよねぇ。ああ、またすれ違っちゃったよ…って」

天野「これまでの人生で、弥生と太郎のように、好きなのにすれ違ってばかりのような恋愛をしたことってあった?」

光浦「そもそもこの映画を観て思ったのは、自分の好きな人が自分を想っている、お互いの恋愛温度や熱量が同じ、そんな両想いってあるのかなぁってこと」

大久保「まったく同じっていうのはないんじゃないかなぁ。そんなに求めちゃだめよ。でも、同じじゃないからすれ違うんだよね」

天野「そうだね。すれちがいの恋と言えばメグ・ライアンの『恋人たちの予感』。ある男女の11年にわたる友情と愛を描いている映画で、何年にもわたってふたりの関係性を描いていくのは『弥生、三月』にも通じるよね。トム・ハンクスと共演した『めぐり逢えたら』も運命の出会いを描いたラブストーリーで好きだなぁ『めぐり逢えたら』って、ラジオがきっかけで2人は出会うんだよ」

光浦「ラジオって私たち世代!でも、ラジオで気持ちが動いて行動しちゃうってすごいよね」

大久保「最近の『あと1センチの恋』も友達以上恋人未満の幼なじみが12年間すれ違っちゃう映画ですよね。やっぱり恋愛映画においては、惹かれ合う男女がすれ違ってこそ物語が盛り上がる」

■ 「運命の相手って、その人のなにもかもがなくなった時、好きかどうかなのかなあって」(光浦)

天野「『弥生、三月』でおもしろい設定だなと思ったのは、3月だけで描いていること。弥生とサクラは高校の同級生で、サクラはサッカー部の太郎のことが好きで、そんな3人の高校生活から物語は始まるんだけど、描かれる全部のシーンが3月なんだよね」

大久保「3月だけで描くって、ものすごく斬新だった!」

光浦「アン・ハサウェイ主演の『ワン・デイ 23年のラブストーリー』とも似ているかも。その映画は7月15日だけで23年間を描いてるんですよ。お互い恋人ができたり結婚をしたりして、タイミングが常に合わないのも共通点かな」

大久保「ほんと、タイミングって大事だよね」

光浦「『ワン・デイ~』も『弥生、三月』も、長い年月のなかで一つの恋愛が描かれてるね」

天野「長い時間軸のなかで物語が展開すると、恋愛のいろいろな事実が見えてくる。ちょっとファンタジックな『エターナル・サンシャイン』もそういう設定で好き。2人を映しだす俯瞰の画が印象的で、おもしろい撮り方しているなぁって思ったんだよね。コメディもシリアスも演じられるジム・キャリーがいいのよ」

大久保「私の好きな『(500)日のサマー』も設定がユニークなの!」

光浦「おしゃれな映画だよね。サマーに恋するトム役の俳優が、ひょろっとしてて冴えない文化系男子でとってもよくて。その彼と『弥生、三月』の成田凌くん、雰囲気が似てるー!成田くんは別の映画を観ても思ったんだけど、フラフラしたダメ男役が似合うよね。だから今回の太郎が、自分の思い描いたような人生にはならなくて、やけっぱちになっちゃうシーンとか、好きだなあ」

天野「そんなふうに夢に破れてだらしなくなった太郎を弥生が立ち直らせようと尻を叩くところとかもよかった」

大久保「ラブストーリーでは、男は一度落ちぶれたほうが女心をくすぐるのかもね(笑)」

光浦「『弥生、三月』を観て思ったのは、運命の相手って、その人のなにもかもがなくなった時、好きかどうかなのかなあって」

天野「おお!いいこと言うねえ。要するに肩書きとかなにもなくなったその人の素を愛せるかどうかってことだ」

<後編へ続く>(Movie Walker・文/新谷 里映)