新海誠、Macの向こうから世界を変えたクリエイターが語る「創作の原点と未来」

新海誠、Macの向こうから世界を変えたクリエイターが語る「創作の原点と未来」

まさに、Macの向こうから世界を変えた人物。

アップルが展開するキャンペーン『Macの向こうから』をご存知でしょうか? Macを使って世界にインパクトを与える活動を行っているクリエイターや、注目すべき学生たちにフォーカスを当てて来た、人気のキャンペーンシリーズです。

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先日、有名アニメ作品のキャラクターがMacを使っているシーンを集めた新作が話題となったのも記憶に新しいところですが、その最新作に大ヒット作品『天気の子』や『君の名は。』で知られるアニメーション監督の新海誠さんがフィーチャーされました。

新海監督の最初のブレイクスルーは、Macとともにたった一人で作ったアニメーション作品『ほしのこえ』。大人数での作業が当たり前だったアニメを一人とは思えないクオリティーで成し遂げた作品として業界内外で大きな話題を呼び、個人のクリエイターが自由に活躍できる時代を高らかに宣言しました。

そんな新海誠監督は、まさに『Macの向こうから』に最適の人選ではないでしょうか。

ということで今回、ギズは幸運にも監督にインタビューする機会を得られました。日本映画の興行ランキングを塗り替え、『君の名は。』のハリウッドリメイクも進行している、時代を席巻する稀代のクリエイター新海誠、そのMacとの出会い、現在の愛機、そしてテクノロジーと創作の関係性、宮﨑駿監督への憧憬まで、特大ボリュームでお届けします。

黒いブラウン管に浮かぶ緑の光。それでもコンピューターは未来の象徴だった

── 新海監督はいつからコンピューターを使い始めたのでしょうか?

1973年生まれの世代としてはだいぶ早く、小学校4年か5年生の頃でした。当時すでにMacは発売されていましたが、日本では限られたところでしか使われていなくて、Windowsはまだ出ていなかった頃です。NECのPC-8800シリーズ、富士通FMシリーズなど国産メーカーから独自のコンピューターが何機種も出ている状況で、僕はシャープのMZ-2000というマイナーなパソコンを親に買ってもらい、それから夢中になりました。

── パソコンに興味を持ったきっかけとは?

もはや何がきっかけだったのかも覚えていないんですけど、おそらくアニメとか漫画の影響じゃないかと思います。当時すでに『機動戦士ガンダム』も放送されていたし『ドラえもん』にもパソコンみたいなものが出てきていたので、幼い僕にとってコンピューターは”未来の象徴”のようなものでした。

── 他にパソコンを使っている友だちはいましたか?

いませんでしたね。当時はファミコン全盛期だったのですが、みんながファミコンで遊んでいるときに、僕は自分で本屋さんで買って来たPC専門誌を見ながらプログラミングして遊んでいました。というのも、シャープのMZ-2000はマイナーな機種だったので、あまりゲームソフトが無くて、自分でプログラミングするしかなかったんです。

── 「昔のパソコンでは、自分でプログラムを組んで遊んでいた」とはよく聞きますが、まさにそれですね。どんな使い方をしていたのでしょうか?

簡単なお絵描きプログラムを書いて、それを使って絵を描いたり、楽譜を入力して音楽を奏でさせたりしていました。ディスプレイはカラーではなく真っ黒なブラウン管に緑色の文字が浮かぶだけだし、表現力は限られていたんですけど、文字を入力できるし、単音のビープ音でメロディーは奏でられるし、解像度が低くカクカクしていたけど絵も描けたので、最高のおもちゃだと思いましたね。

── 小学生の時点で、ゲームではなく創作方面で使っていたんですね。

『すてきな三にんぐみ』という絵本が好きだったので、その絵を方眼紙に描き写してX軸とY軸の座標でパソコンに入力して描き、文章を全部カタカナで打って、教科書に載っている好きな曲の楽譜を打ち込み、キーを押すとページがめくれる絵本のようなものをコンピューター上に作りました。

── マルチメディアという言葉が知られるずっと前に、そういった作品を作っていたと。

ファミコンやワープロのような”専用機”と違って、パソコンでは異なるメディアを自在に操れるというのがとにかく楽しくて「この先に未来がある」と思って勝手にワクワクしていたんです。