『アバウト・ア・ボーイ』年の差を超えて育まれる思いがけない化学反応。人気俳優と子役の名コンビ映画は、なぜこんなに面白いのか!?

引用元:CINEMORE

 物語の舞台はロンドン。ウィル(ヒュー・グラント)は38歳なのに定職にも就かず、亡き父親がヒットさせたクリスマスソングの印税だけで自由気ままに暮らしている。一方のマーカスは、精神的にちょっと調子が悪い母親の面倒を見ながらも、なんとか逞しく生きる12歳の少年だ。「共に友人がいない」という以外になんら接点のない二人だったが、ひょんなことから出会い、互いの心の欠片を埋め合いながら、かけがえのない友情を育んでいくことになるーーーー。

 作家ニック・ホーンビィによるベストセラー小説を、見事な味付けで脚色した映画『アバウト・ア・ボーイ』(02)。その魅力は、なんといってもそのキャスティングの妙にある。中でもヒュー・グラント演じる中年男性と、ニコラス・ホルト演じる少年役の組み合わせは絶品。彼らが二人並んだポスター写真を見るだけで「この映画は絶対面白いはず!」と確信せずにいられない。

 ここに映っているヒュー・グラントの正統派のイケメンぶりはいつも通りだとしても、子役の絶妙に“ブサかわいい”感じは奇跡的。つまるところポスターは「この二人が共演すると一体どんな味わいが生まれるのか、観てみたいでしょ?」と提起しているわけで、これは映画の魅力を端的に落とし込んだ、素晴らしいプレゼンテーションですらあると思う。

 この組み合わせが新鮮に思えるのも当然だ。我々はこれまで人気俳優ヒュー・グラントが子供とどっぷりと共演する様なんて見たことがなかった。いや、本人だってそのことについては正直に、「僕はもともと子供が好きではないし、子供の頭を撫でたりするタイプでもない。子供と接すると間が持たず、本当に困ってしまう」と告白しているほど。そんな彼が上映時間100分の映画の中で、子役ニコラス・ホルトと濃密なやり取りを見せているのだから、これは相当な覚悟を決めたとみていい。その結果、我々は、思いがけない化学反応によってグラントの全く新たな魅力が立ち上がってくるのをつぶさに享受することができるのである。